軽度認知障害(MCI)(mild cognitive impairment)認知症の手前で進行を遅らせる/戻す

軽度認知障害(MCI)のページ冒頭イラスト。「MCIは、引き返せるグレーゾーン」「今の生活で、“進む時計”をゆっくりに。」の見出しとともに、年配のご夫婦が前向きにウォーキングする中心の場面とやさしい時計、バランスのよい食事・生活習慣の管理・人とのつながりの3つの場面を描き、運動・食事・つながりで進行を遅らせる・戻すことを示している。
⚠ 急速進行・幻視併発・歩行障害を伴う MCI はこちら

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最近、もの忘れが
気になる
年のせいか MCI か、
目安があります
「最近おかしい」と
家族に言われた
ご家族の気づきが
手がかりです
検査で MCI と
言われた
戻る4割・進む4割
何をすれば戻れる・
遅らせられる?
運動と生活で
25% 改善
新しい点滴治療の
対象になる?
早期だけが対象
薬はないの? 薬は使いません 運転・仕事は
どうなる?
すぐやめなくてよい
数か月で急に進む・
幻視・歩き方の変化
ふつうの MCI では
ないかも
意識がもうろう・けいれん・
片側の手足に力が入らない
意識がもうろうとして戻らない・けいれんを起こした・急に片側の手足が動かない、ろれつが回らないときは、MCI ではない病気(脳卒中など)を先に確かめます。 119番の目安を確認する
主な流れから順に

ABOUTMCI とは、どの段階か年相応・MCI・認知症を分ける物差しは「日常生活」

軽度認知障害(MCI)は、ご本人や家族がもの忘れに気づき、検査でも軽い低下があるのに、日常生活は自分でできている段階です1。「認知症の手前」であって、認知症ではありません。

年相応のもの忘れ・MCI・認知症の見分け方
項目年相応MCI認知症
もの忘れヒントで
思い出せる
約束ごと
を忘れる
忘れたこと
を忘れる
検査年齢の
範囲内
軽い低下はっきり
した低下
日常生活変わらない自分で
できる
支えが要る
これから戻る4割
進む4割
進みを
ゆるやかに

「支えが要る」に近い方は、認知症のページで治療と生活の組み立てをご覧ください。

「年のせいでしょ? 誰でもこれくらいある」

年相応は“ヒントで思い出せる”のが目安です。それでも気になるなら、一度調べる価値があります。検査は初診の当日に院内で終わります。

FLOW受診から診断までの流れ

初診当日に院内で進む4つの場面を左から右に並べたイラスト。各場面の上に「問診」「歩き方の診察」「認知機能検査」「頭部MRI」のラベルがあり、その順に同じご本人が進んでいく。

当日(初診は90分ほど・院内で)

まず、治せる原因(正常圧水頭症・慢性硬膜下血腫・甲状腺・ビタミンB12・うつ症状・お薬)を除外します。くわしくは治せるもの忘れのページへ。

  1. 問診 進む速さ(年単位でゆっくりか、数か月で急か)、気分・睡眠、飲んでいる薬、持病(高血圧・糖尿病・脳卒中・甲状腺)、仕事・運転・買い物・服薬管理の自立度を、ご家族の見方も含めてうかがいます。
  2. 歩き方の診察 歩き方や手足の動きを診ます。歩き方の変化がもの忘れに先行/並行しているときは、正常圧水頭症の可能性を念頭に置きます。
  3. 認知機能検査 MMSE・MoCA-J で点数を確認します(MoCA-J はMCI 段階の拾い上げに強く、25/26 点以下で MCI 疑い)。気分の落ち込みがある方には、うつのスクリーニングを併用します。
  4. 頭部MRI院内で当日 海馬の萎縮や白質病変・血管病変を評価し、慢性硬膜下血腫や水頭症など治療可能な原因を漏らさず除外します。
  5. 血液検査結果は後日 甲状腺機能・ビタミンB12/葉酸・電解質・肝腎機能・血糖/HbA1c・脂質ほかを調べます。甲状腺機能低下やビタミンB12 欠乏は治療で改善し得る原因です。
  6. 診断と方針 MCI と判定したら、進みやすい側か戻りやすい側かの見当を踏まえて、生活の介入とフォローの間隔を一緒に決めます。

後日

  1. 追加検査が必要なとき 病型のあたりがついた段階で、確定診断や治療の対象かを決める追加検査を組み合わせます。 連携先の結果は当院で一緒に確認し、その後のフォローを組み立てます。

TREATMENT早期介入の組み立て非薬物療法が主役

診察室で、医師が机の上の計画表をペンで指し示しながら、ご本人とご家族と一緒にこれからの生活の計画を相談しているイラスト。

生活

運動と生活で、進む時計をゆっくり

25% 運動・食事・認知刺激・血管リスク管理を組み合わせた多因子介入で得られた、認知機能の改善幅6。単独より、組み合わせるほど効果が積み上がります16。生活習慣を含む 14 因子の管理で、認知症の 45% は防げると報告されています12
  • 運動
    週 150 分が目安7
  • 食事
    地中海食を意識
  • 血管リスク
    持病の管理を続ける
  • 補聴器
    耳が遠くなったら試す11
  • 社会参加と睡眠
    趣味の場へ・いびきは評価

どれも当院の外来で、一緒に続けられます。

点滴早期だけ

新しい点滴治療(抗アミロイドβ抗体療法)

どんなとき
アルツハイマー型のサインがある、ごく早期の MCI
何をする
当院認知機能検査・MRI・血液検査で対象になりそうかを見極め、認定施設で脳のアミロイド検査へ
注意・相談
進行を止めるのではなく、進む時計をゆっくり回す治療1314。定期的な MRI で脳のむくみ・小さな出血を確認

当院との3段階(導入後6か月以降は当院で)

  1. 当院早期発見
  2. 認定施設導入
  3. 当院維持投与
当院で受けられる?(くわしくは FAQ)
飲み薬

MCI に飲み薬(抗認知症薬)は使いません

どんなとき
MCI と診断された段階
何をする
保険適応外で、進行を抑える効果も確立していないため使いません。生活の介入が主役です
注意・相談
  • サプリ・脳活性飲料に頼らない
  • もの忘れを悪くしやすい薬(抗コリン作用薬・睡眠薬)は見直しを相談
  • 認知症へ進んだときに治療を始めます

PROGNOSIS進行リスクと予後あなたはどちら寄り?

明るい公園の遊歩道が二手に分かれる地点に、ご本人・ご家族・医師が並んで立つイラスト。進む道と戻る道のどちら寄りかを、医師が先の道を手で示しながら一緒に考えている。

「MCI と言われた。もう認知症になるの?」

必ずではありません。5年で戻る人が約4割、進む人が約4割3。どちら寄りかは、調べて分かります。

進行しやすい方

早めに精査と介入を進めるほうが安心です

  • アルツハイマー型のサインあり:専門検査でアミロイドβの蓄積が確認される
  • 画像所見:海馬の萎縮が目立つ/白質病変が広範
  • 遺伝要素:アルツハイマー型を起こしやすい遺伝素因がある
  • 血管リスク:高血圧・糖尿病・心房細動のコントロール不良
  • 背景因子:65 歳以上/気分の落ち込み/教育歴が短い/社会的孤立
  • 進行速度:数か月で検査点数が大きく下がる急速進行

戻りやすい方

生活介入だけで正常へ戻る可能性があります

  • 年齢・知的予備能:若年/教育歴が長い
  • 低下の程度が軽い:認知機能テストで軽度の低下にとどまる
  • 背景に治せる原因:気分の落ち込み・薬剤・全身状態の影響を受けていた
  • アルツハイマー型のサインなし:アミロイドβ陰性/海馬萎縮なし

時間が経つほど認知症へ進む人の割合は増えます3

グラフの読み方として、累積進行率とは、MCI と診断された方を一定期間追いかけたときに、その時点までに認知症へ進んだ方の合計割合のことです。

100 人の MCI 患者さんを 5 年追いかけると、43 人が認知症へ進む一方で38 人は正常へ戻る計算です。アミロイドβのサインが陽性なら進む方に、陰性なら正常へ戻る方に近づく傾向があります。当院ではこの方向性を踏まえてフォロー間隔と介入強度を決めます。

手がかりから、進む先の見当

ご家族が気づくこと
  • もの忘れだけが目立つ → アルツハイマー型が最も多い
  • ものの位置や距離感がつかみにくい・幻視・受け答えの波 → レビー小体型
  • 段取りが苦手・性格や行動の変化 → 前頭側頭型
  • 脳卒中のあと段階的に悪化 → 血管性
当院での確かめ方
認知機能検査と頭部MRIで見当をつけ、必要なときは後日の追加検査
治療(どこで)
当院見当に応じて注意する症状とフォローの間隔を決めます。認知症(4大病型)のページも参考に

WARNING SIGNSこんな症状はすぐ受診を

あなたの MCI の緊急度をご確認ください

緊急

すぐに救急受診

  • 意識がもうろうとして戻らない/けいれん
  • 突然の頭痛+意識変容(くも膜下出血疑い)
  • 急に片側の手足に力が入らない・ろれつが回らない(脳卒中疑い)
119に電話する
注意

数日以内に受診

  • 「死にたい」と口にする(その日のうちにご相談ください)
  • 数か月で急に進むもの忘れ(治せる原因を先に除外)
  • 歩き方の変化・もの忘れ・尿もれが重なる(正常圧水頭症の可能性)
  • 幻視・小刻み歩行ともの忘れが重なる(レビー小体型の前ぶれの可能性)
  • 激しい行動の変化・人が変わったような言動(前頭側頭型の可能性)
  • 頭をぶつけた経験があり、もの忘れが進む
0942-42-1155 に電話
相談

予約して受診

  • 緩徐な進行で「ヒントで思い出せる」レベルのもの忘れ
  • 家族から「最近少しおかしいかも」と指摘された
  • 検査で MCI と言われ、これからのことを相談したい/早期介入を始めたい
  • 65 歳未満で始まったもの忘れ(遺伝の関わりや治せる原因を専門で調べます)
WEB予約・アクセス

FAQよくある質問

MCI と診断されたら必ず認知症になりますか?
必ずではありません。5 年で約 4 割が認知症へ進み、約 4 割はもとの正常な認知機能へ戻ります3。「戻る側」か「進む側」かは、次の手がかりで見分けます。
  1. 戻る① 約 4 割はもとの正常な認知機能に戻る 背景に気分の落ち込み・薬剤・全身状態の影響がある例、若年・教育歴が長い例、アミロイドβのサインが陰性の例では戻りやすい傾向があります。原因評価で見つけられる "戻れる要素" を取りこぼさないことが大事です。
  2. ② 5 年で約 4 割は認知症へ進行する アミロイドβのサイン陽性/海馬の萎縮が目立つ/アルツハイマー型の遺伝素因/コントロール不良の血管リスクがあると、進行リスクは高まります。早めに認定施設へつなぐ判断が必要です。
  3. ③ 半年〜1 年ごとの定期フォローで方向性を見極める 同じ MCI でも数か月で方向が変わることがあります。MMSE / MoCA-J と必要時の MRI を組み合わせて進む側か戻る側かを継続的に評価し、介入の強さを調整していきます。
MoCA-J と MMSE はどう違いますか?
MMSE は認知症の有無の判定、MoCA-J はMCI 段階の拾い上げに強みがあります。
  • MMSE:23点以下(30点満点)で認知症疑い、24〜27点 が MCI 域目安
  • MoCA-J:25/26点以下(30点満点)で MCI 疑い
  • 当院では症例に応じて MoCA-J を中心に組み合わせて評価
MCI で抗アミロイドβ抗体療法(レカネマブ/ドナネマブ)は受けられますか?
対象はアルツハイマー型のサインがある MCI 〜軽度のアルツハイマー型で、アミロイドβの蓄積が確認できる方です。早期発見は当院、サインの確認と投与開始は認定施設という連携で受けていただきます。「対象になるかどうかをまず知りたい」という方も当院でご相談いただけます。
  1. ① 当院で早期発見・スクリーニング 認知機能テスト・頭部 MRI・血液検査で対象になりそうかを評価し、脳のむくみ・小さな出血のリスクを説明したうえで、必要に応じて学会認定の大病院へ紹介します。
  2. ② 認定施設でサインの確認と投与開始 紹介先でアミロイドβを確かめる専門検査と MRI の定期確認を行い、適応が確認できれば投与を開始します。脳のむくみや小さな出血のリスクは画像所見で慎重に判断します。
  3. ③ 効果のイメージと共通条件 レカネマブは認知機能の悪化スピードを約 27% 緩める13ドナネマブは日常生活の力の低下を約 35% 緩める14結果でした。進行を止めるのではなく進む時計をゆっくり回す治療で、早期に始めるほど自立期間を延ばしやすくなります。

「運転は、もうやめないといけない?」

MCI の段階で、すぐやめる決まりはありません。認知症と診断されてから手続きが動きます。不安があれば診察で一緒に判断します。

運転は続けてよいですか?仕事や家族にはどう伝えれば?
MCI の段階では、運転を直ちにやめる決まりはありません。認知症と診断されて初めて手続きが動く仕組みです18。仕事・ご家族への伝え方もあわせて整理しました。
  1. ① 運転 — 認知症と診断されて初めて手続きが動く 道路交通法の認知機能検査は75歳以上の免許更新時が対象で18、MCIというだけで直ちに免許が取り消されることはありません。検査で「認知症のおそれがある」と判定された場合は医師の診断を受け、認知症と診断されて初めて停止・取消しの手続きに進みます18。年齢を問わず運転に不安を感じたら、診察時にご相談ください。半年〜1年ごとのフォローで進行の有無を確認しながら一緒に判断していけます。
  2. ② 仕事 — 申告の義務はなし。支障が出たら相談を MCI の診断だけで会社に申告する法律上の義務はありません。日常業務に支障が出ている、あるいは運転・機械操作など安全に関わる業務に不安がある場合は、産業医や人事へ相談することをおすすめします。当院からの診断書・意見書の作成もサポートします。
  3. ③ 家族 — 早めの共有が、後の備えを楽にする 話すかどうかに正解はありませんが、早めに共有しておくと、通院の付き添いや服薬確認、運転・金銭管理の見守りなど生活の変化に一緒に備えやすくなります。ご本人おひとり・ご家族だけで抱え込まず、診察の場でご相談ください。

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つつみ脳神経外科クリニック
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