ギラン・バレー症候群(GBS:Guillain-Barré Syndrome)先行感染後に急速進行する手足の脱力、早期治療が予後を変える

ギラン・バレー症候群のページ冒頭イラスト。「早く治療を始めれば、回復をめざせる」の見出しとともに、手すりにつかまり理学療法士に見守られて歩行リハビリに取り組む男性を中央に描く。右側には、風邪やお腹の不調などの先行感染、病院への受診、点滴での免疫治療、リハビリ、回復して散歩を楽しむまでの流れを小さな場面で示し、「早めに受診・早期治療・あせらず回復」という回復への道のりを表している。
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こんな症状はありませんか?

複数当てはまる方は GBS の可能性があります。発症 2 週以内に治療を始められると回復が大きく変わります。

TYPES症状の見分け方主な 4 つの病型と気づき方の手がかり

GBS には大きく分けて 4 つのタイプ(病型)があり、足から手へ広がる典型型がもっとも多く見られます。

ギラン・バレー症候群の典型的な気づき方を2場面で示したイラスト。左は1〜2週間前に風邪やお腹の不調などの先行感染でつらそうにする男性、右は足から手へ広がる脱力で手すりにつかまって立ち、配偶者がそばで気づかわしげに支える様子。先行感染のあと足から手へ上っていく左右対称の脱力という特徴を表している。

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典型型(脱髄型) 最多

足から手へ上がる対称性の脱力

まず足の力が抜けはじめ、数日〜2 週で手・体幹へ上ってくる、もっとも多いタイプ。

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「歩きにくい・階段でつまずく」が始まりで、進行すると立てない・腕が上がらないと全身に広がっていきます。痛みやしびれを伴うことも少なくありません。

  • 足から手へ上がる左右対称の脱力
  • 反射が落ちる/消える(腱反射低下〜消失)
  • 進行すると呼吸筋・嚥下まで広がりうる
軸索型

急速進行・脱力が主体

数日で立てなくなる急速進行型。

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先行する下痢のあとに発症することが多いのが特徴で、典型型より回復に時間がかかることがあります。

  • AMAN:脱力が中心の軸索型
  • AMSAN:運動+感覚も障害される軸索型
ミラー・フィッシャー症候群

複視・ふらつき・反射消失の 3 徴

特徴はものが二重に見える(複視)+ふらつき+反射消失で気づくタイプ。手足の麻痺は目立たない。

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ギラン・バレー症候群の変異型のひとつで、手足の力は比較的保たれるのが特徴です。眼の動きやバランスの症状が前面に出るため、症状の組み合わせから見分けます。

  • 抗 GQ1b 抗体が陽性になることが多い
  • 多くは数か月で改善します
  • 典型 GBS への移行に注意し経過観察
咽頭頚部上腕型

のど・首・腕に偏った麻痺

のみこみにくさ・首と腕の脱力が前景の珍しい変異型。下肢は比較的軽い。

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のど・首・腕に症状が偏るため、一見ギラン・バレー症候群らしく見えないのが特徴です。だからこそ、症状の組み合わせから慎重に見分けます。

  • 主な症状:嚥下障害・首と腕の脱力
  • 頻度は低いが見逃されやすい

見分けるうえで進行スピードと先行感染の有無がもっとも大事な手がかりです。2〜4 週間以上かけてゆっくり左右対称に弱っていく場合は GBS ではなく、慢性に経過する CIDP (シーアイディーピー=慢性炎症性脱髄性多発神経炎)という別の病気を考え、診断と治療の進め方が変わります。

FLOW受診から治療までの流れ高次施設での入院検査・モニタリング・専門治療

GBS が疑われたら、入院でのモニタリング・検査・治療が必要になるため、当院の役割は速やかに高次施設へ橋渡しすることです。診断後の経過観察・リハビリ・後遺症ケアにも関わっていきます。

受診から治療・回復までの流れを左から右に4場面で並べたイラスト。当院で医師が打腱器で足の反射を診てGBSを疑う、紹介状を渡して高次施設へ橋渡し、入院して腕から免疫グロブリン静注療法(IVIg)の点滴を受ける、回復期に理学療法士と平行棒で歩行リハビリをする、の順に同じ男性が進んでいく。
  1. 問診 1〜3 週前の風邪・下痢の有無、力の抜け方や進む速さ、飲み込みや息のしづらさ、立ちくらみなどをうかがいます。
  2. 神経学的診察院内で実施 手足の力・反射・感覚・呼吸や飲み込みを調べて重症度を確認し、脳卒中など他の病気との区別も行います。
  3. 採血・必要時の脳画像同日 血液検査を行い、必要に応じて院内 MRIで脳の病気を除外します。
  4. 高次施設への速やかな紹介救急依頼 急性期の GBS は入院での経過観察と治療が必要なため、脳神経内科のある総合病院・大学病院へ速やかに紹介します。
  5. 髄液検査・神経伝導検査入院後 入院先で髄液検査や神経の検査を行って診断します。
  6. 免疫治療の開始2 週以内が目安 発症 2 週以内を目安に、免疫グロブリン静注療法または血漿交換を始めます。重症例では呼吸などのモニタリングを並行します。
  7. リハビリと後遺症ケア亜急性期〜慢性期 急性期を脱したらリハビリを早期に始めます。当院では退院後の経過観察、しびれや痛みの後遺症ケアを継続します。

SEVERITY重症度をどう測るかHughes 機能スケール(FG)— 歩けるか・呼吸補助が必要か

GBS では「日常でどこまで動けるか」を、Hughes 機能スケール(FG:Functional Gradeで 0〜6 点に分けて評価します。歩行の可否と呼吸補助の必要性が治療強度を決める基準になります2

グレード日常での状態の目安
外来でフォローFG 0〜2:日常生活はおおむね可能
FG 0正常(症状なし)
FG 1軽い症状はあるが、ほぼ普段通りに動ける
FG 2支えなしで 5m 歩ける
入院で免疫治療FG 3〜4:歩行が困難 — IVIg/血漿交換を強めに
FG 3歩行器・支えがあれば 5m 歩ける
FG 4ベッドや車椅子の生活(5m 歩行は不可)ガイドライン 2024 重要リスク因子
ICU 級管理FG 5:呼吸補助が必要 — 命を守る集中治療
FG 5人工呼吸器の補助が必要ガイドライン 2024 重要リスク因子
FG 6
FG 6死亡

TREATMENT治療の組み立て免疫治療・呼吸管理・リハビリの 3 本柱

発症 2 週以内に免疫治療を始めることが、その後の回復を大きく左右します。重症のときは呼吸や自律神経の状態を見守りながら治療を進め、急性期を越えたらリハビリで機能の回復を目指します。

ギラン・バレー症候群の治療の3本柱を示した図。免疫治療(点滴のIVIgと血液を浄化する血漿交換)、呼吸管理(人工呼吸器・酸素マスクと呼吸モニター・重症例)、リハビリ(平行棒で理学療法士と歩行訓練・機能回復)の3つをアイコンで並べている。

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免疫グロブリン静注療法

標準量を 5 日間かけて点滴

健康な人の血液から作る免疫グロブリン製剤を点滴する、重症例の第一選択のひとつ。

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免疫グロブリン静注療法(IVIg)は GBS の標準治療のひとつで、5 日間かけて点滴します1。歩けない・進行が速い・飲み込み(嚥下)や呼吸が落ちている・自律神経の症状を伴う、といった場合に、発症 2 週以内に始めるのが望ましいとされています。

血漿交換

原因となる抗体を血液から除く

治療は血漿交換(PE)で原因となる抗体を除去。

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血漿(血液の液体成分)を取り除いて補充液に置き換えることで抗体を減らします3。発症 2 週以内・歩行できない例で、IVIg と並ぶ第一選択です。

重症例のモニタリング

呼吸・自律神経の集中管理

重症例では呼吸筋麻痺・自律神経の不安定さに注意が必要。

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重症例のうち2〜3 割で人工呼吸器管理が必要となるため、呼吸機能のこまめなモニタリングと自律神経症状(血圧変動・不整脈・発汗異常・排尿障害)の把握が欠かせません。

リハビリ・後遺症ケア

機能回復と痛み・しびれのフォロー

急性期を越えたら早期リハビリが回復のカギ。残った後遺症も長くフォローします。

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リハビリを早期から始めることで、日常生活の動作の回復を後押しできます。多くは数か月で大きく改善に向かいます。

一方でおよそ2 割の方には、疲れやすさ・足のしびれ・痛みなどの後遺症が残ります。そのため、リハビリの継続や、しびれ・痛みに対する薬による治療を含めて、長くフォローしていきます。

WARNING SIGNS救急対応が必要なサイン様子見せず救急要請を

以下にあてはまるときは様子を見ず、救急要請または救急外来へ

あなたの症状の緊急度をご確認ください

緊急

すぐに119番

  • 息が苦しい・むせ込みが続く
  • 数日で立てない・腕が上がらない
  • 意識がもうろう・けいれん
119に電話する
注意

数日以内に受診

  • 1〜3 週前に下痢/風邪のあとで力が抜けてきた
  • 左右両側のしびれ・脱力が進んでいる
  • 立ちくらみ・脈の乱れが目立つ
0942-42-1155 に電話
相談

退院後フォロー・予約受診

  • GBS で入院後の経過観察・リハビリの相談
  • 後遺症の痛み・しびれの薬物調整
  • 慢性経過なら CIDP との鑑別もご相談を
WEB予約・アクセス

FAQよくある質問

ギラン・バレー症候群は治る病気ですか?
A. 多くは数か月で大きく改善しますが、一部に後遺症や呼吸不全のリスクがあります。
  1. 最優先① 7〜8 割は完全〜ほぼ完全回復 急性期治療を受けた多くの方は数か月で大きく改善します。早期に治療を始められた例ほど回復が良い傾向があります。
  2. ② 約 2 割で後遺症が残る 疲れやすさ・足のしびれ・痛みなどが長く残ることがあります。退院後のリハビリと薬物調整でフォローします。
  3. ③ 重症例の 2〜3 割で人工呼吸器管理 急速進行例では呼吸の力が落ちて人工呼吸器が必要になります。入院での呼吸モニタリングが命を守る土台です。
「先行感染」とは何ですか?
A. 発症の 1〜3 週前にあった、ありふれた感染のことです。
  1. ① 多くは下痢か風邪 代表はカンピロバクター腸炎(下痢)です。サイトメガロウイルス・EB ウイルス・マイコプラズマ・COVID-19などの上気道感染も先行することがあります。
  2. ② 体の免疫が誤って末梢神経を攻撃 先行感染で活性化した免疫が、本来は守るべき末梢神経を誤って攻撃してしまうのが GBS の本体です。先行感染そのものが直接の原因ではない点が特徴です。
  3. ③ ワクチン後に起こることはごくまれ インフルエンザワクチン・COVID-19 ワクチン後の GBS 発症は確認されていますが、頻度は極めて低く、ワクチンによる感染症予防のメリットの方がはるかに大きいとされています。
免疫グロブリン静注療法(IVIg)と血漿交換、どちらがいいですか?
A. どちらも効果は同等で、施設の体制と全身状態で選びます。
  1. ① 効果はほぼ同じ IVIg と血漿交換(PE)は、回復までの期間や歩行回復率に大きな差はないことがランダム化試験で示されています4
  2. ② 多くの施設で使いやすいのは IVIg IVIg は点滴のみで実施でき、血管確保が難しい例にも使いやすいため、第一選択になることが多いのが現状です。
  3. ③ 併用は推奨されない IVIg と PE の併用は、追加の効果が確認されていないため推奨されません。ステロイド単独も GBS には効果がなく、推奨されないのが原則です。
慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)とはどう違いますか?
A. 進行スピードが大きな違いです。GBS は数日〜2 週、CIDP は 2 か月以上かけて進みます。
  1. ① 進行スピードで見分ける GBS は急性で数日〜2 週間でピークに達するのに対し、CIDP は慢性で2 か月以上かけてゆっくり進みます。
  2. ② 治療経路が違う GBS は急性期に IVIg・血漿交換を集中して行いますが、CIDP は長期にわたる免疫治療(IVIg・ステロイド・血漿交換)が中心になります。
  3. ③ 治療関連変動が多いと CIDP を考える 8 週を超えての悪化や 3 回以上の治療関連変動(TRF)がある場合は、急性発症 CIDP の可能性も視野に入れて再評価します。
ワクチンを受けるのが心配です。
A. ワクチン後の GBS は極めて稀で、感染症予防のメリットの方がはるかに大きいです。
  1. ① ワクチン後の GBS は極めて稀 インフルエンザワクチン・COVID-19 ワクチン後の GBS 発症は知られていますが、100 万接種あたり数例と極めて稀です。
  2. ② 感染症本体の方が GBS リスクが高い インフルエンザや COVID-19 などに感染した場合の GBS リスクは、ワクチン接種後よりも一般に高いことが報告されています。
  3. ③ 過去に GBS の方は事前相談を 過去にギラン・バレー症候群と診断されたことがある方は、ワクチン接種前に主治医・かかりつけ医と相談していただくと安心です。
治療後にいったん良くなった症状がまた悪くなりました。再発ですか?
A. 治療関連変動(TRF)が起きている可能性があります。再発とは扱いが異なります。
  1. ① GBS の約 10% で TRF が起こる 治療でいったん改善したあとに症状が再増悪する治療関連変動(TRF)は、IVIg・血漿交換のどちらでも起こりえます。頻度は約 10% です。
  2. ② 追加の免疫治療を検討 再増悪のパターンによっては、追加の IVIg や血漿交換を検討します。担当医と次の一手を相談してください。
  3. ③ 8 週超え・3 回以上は CIDP の鑑別 発症から8 週以降の悪化や、3 回以上の TRFがみられる場合、急性発症 CIDP の可能性を考えて再評価します。

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つつみ脳神経外科クリニック
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