頭部外傷
頭を打った後の受診の目安と、見守りのポイント
⚠ 救急車を呼ぶべきサインを確認する →
ABOUT頭を打ったとき、体の中で何が起きているか心配なのは、外側のケガより「頭蓋骨の中」です
転倒や交通事故、スポーツ中の衝突などで頭を打ったとき、目に見える頭皮のケガや「たんこぶ」は、実は心配の中心ではありません。本当に確認したいのは、外からは見えない頭蓋骨の中=脳に何が起きているかです。
外側のケガ
頭皮の傷・たんこぶ(皮下血腫)
頭皮は血流が豊富なため出血が多く見えがちですが、傷そのものは圧迫や縫合で対応できることがほとんどです。たんこぶは「頭皮の下」の出血で、頭の中の出血とは別物です。
頭蓋骨の中のケガ
脳振盪・頭蓋内出血(脳の表面や脳の中に血がたまる)
衝撃で脳が揺さぶられて一時的に働きが乱れたり(脳振盪)、脳の表面や脳の中で血管が切れて血がたまったり(頭蓋内出血)することがあります。頭を直接打っていなくても、強く揺さぶられるだけで起こることがあります1。
頭の中のケガは、時間がたってから姿を現すことがあるのが特徴です。このページでは「直後」「24時間」「数日」「数週間〜数か月」という時間の流れに沿って、注意すべきポイントを整理します。
EMERGENCY頭を打った後の緊急度をご確認ください「すぐ119番」「その日のうちに受診」「24時間の見守り」の3段階です
頭を打った後の対応は、症状によって緊急度が変わります。赤の段のサインが1つでもあるときは、頭の中で出血が進んでいる可能性があります。様子を見ずに、救急車(119番)を呼んでください12。
あてはまる段の対応をとってください
緊急
すぐに119番
- 意識がおかしい・呼びかけへの反応が鈍い
- けいれんを起こした
- 嘔吐を何度もくり返す
- 手足に力が入らない・しびれる
- ろれつが回らない・言葉が出ない
- 左右の瞳孔(黒目の中心)の大きさが違う
- 頭痛がどんどん強くなっていく
119に電話する
注意
その日のうちに受診
- 一瞬でも気を失った(今は意識が戻っていても)
- 頭を打った前後のことを思い出せない(健忘)
- 鼻や耳から水のような透明な液や血が出続ける
- 交通事故や高い所からの転落など、強い衝撃だったとき
- 高齢の方・血をサラサラにする薬を飲んでいる方は、症状がなくても一度受診を
- お酒を飲んでいて様子の変化が分かりにくいとき
0942-42-1155 に電話
見守り
24時間は見守り
- 受傷後24時間は大人が付き添い、一人にしない
- 新しい症状が出たら、上の2段に戻って対応を
- 見守り方のポイントは、次の章で解説します
見守り方を確認する
FIRST 24H直後に元気でも、油断しないでください「話せていたのに、後から悪化する」ことがあります
頭の中の出血はゆっくり進むことがあります。受傷直後はふつうに話せていても、数時間〜1日たってから意識が悪くなることがあり、直後の症状がない時間は「意識清明期」と呼ばれます1。
だからこそ、受傷後24時間は大人が付き添い、一人にしないことが大切です12。中でも最初の数時間が、もっとも注意して様子を見たい時間帯です。時間の流れごとの注意点を表にまとめました。
| 時期 |
注意すること |
| 直後 |
上の緊急サインがないかを確認。1つでもあれば、すぐ救急車(119番)を呼ぶ。一瞬でも意識を失った・打った前後の記憶がない場合は、その日のうちに受診12 |
| 〜24時間 |
大人が付き添い、一人にしない12。特に最初の数時間は注意深く。新しい症状が出たら受診・救急要請。高齢の方・血をサラサラにする薬を飲んでいる方は、症状がなくても当日受診を2 |
| 翌日〜数日 |
続く・広がる頭痛、打った前後のことを思い出せない(健忘)、めまい・吐き気、性格の変化があれば受診1 |
| 数週間〜数か月 |
歩きにくい・もの忘れのような症状・がんこな頭痛は慢性硬膜下血腫の可能性34。次の章で詳しく解説します |
※どの時期でも、心配な変化があれば我慢せずご相談ください。
夜間・休日に受診を迷うときは、救急電話相談#7119(福岡県・24時間365日、看護師が相談対応)をご利用ください。お子さんについては、小児救急電話相談#8000もあります。
WEEKS LATER数週間〜数か月後の「じわじわ」に注意慢性硬膜下血腫は、治療で改善が期待できる病気です
頭をぶつけた数週間〜数か月後(多くは1〜2か月後)に、脳の表面にゆっくり血がたまってくる病気で、慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかけっしゅ)と呼ばれます34。
ご本人もご家族も頭をぶつけたこと自体を忘れた頃に、症状が少しずつ進んでいくのが特徴です34。はっきりした打撲を思い出せなくても起こることがあります。
打撲を忘れた頃に、こんな変化はありませんか?
- 歩きにくい・ふらつくようになった
- なんとなく元気がない・ぼんやりしている
- もの忘れのような症状が出てきた
- がんこな頭痛が続いている
- 片側の手足が動かしにくい
特に注意していただきたいのは、高齢の方・お酒をよく飲む方・血をサラサラにする薬(抗血栓薬)を飲んでいる方です34。軽い打撲がきっかけになることもあります。
慢性硬膜下血腫は、治療で症状の改善が期待できる病気です。たまった血は、局所麻酔でできる小手術で取り除くことができ、多くの方で症状の改善が期待できるとされています3。一方で、再発はおよそ10%前後(報告により3〜20%)とされ、治療のあとも経過観察が大切です35。
当院の役割:当院ではCT・MRIを院内で実施でき、「ふらつき」「もの忘れのような症状」の背景にこの病気が隠れていないかを確認できます。手術が必要と判断した場合は、速やかに連携病院へご紹介します。
CONCUSSION脳振盪(のうしんとう)とスポーツ意識を失わなくても、脳振盪は起こります
脳振盪は、頭への衝撃で脳の働きが一時的に乱れた状態です。「気を失わなかったから大丈夫」と思われがちですが、意識を失わなくても脳振盪は起こります1。
CTやMRIなどの画像検査では異常が写らないことが多い一方で、頭痛・めまい・集中しにくさ・ぼんやりした感じなどの症状が、しばらく続くことがあります。スポーツ中に脳振盪が疑われたときは、次の原則が国際的に共有されています1。
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その日は競技に戻らない
脳振盪が疑われたら、当日の競技復帰はさせないのが原則です。「大丈夫」という本人の申告だけで判断しないでください。
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症状が消えるまで休む
頭痛やめまいなどの症状が残っている間は、練習に戻りません。症状が完全に消えてから、復帰への段階を始めます。
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段階的に復帰する
軽い運動から順に強度を上げ、各段階の間は24時間以上あけます。途中で症状が出たら、前の段階に戻ります。
部活動の子どもたち・保護者の方へ:「試合に出たい」「チームに迷惑をかけたくない」と、子どもは症状をがまんして隠しがちです。頭を打ったあとの「なんとなく様子が変」を、周りの大人が拾ってあげてください。復帰の判断に迷うときは、当院にご相談いただけます。
OUR CLINIC当院でできること問診・神経診察・CT/MRIで「頭の中」を確認します
「救急車を呼ぶほどではないけれど、頭の中が心配」というとき、当院で状態を確認できます。受診の流れは次のとおりです。
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問診
いつ・どのように頭を打ったか、その後の時間経過、飲んでいるお薬(特に血をサラサラにする薬)を伺います。お薬手帳をお持ちください。
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神経診察
意識の状態・手足の力・感覚・歩き方などを確認し、頭の中のケガを疑うサインがないかを診察します。
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CT・MRI検査
急いで確認したい出血の評価が得意なCTを中心に、必要に応じてMRIで詳しく確認します。いずれも院内で実施できます。
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結果のご説明・連携
結果をわかりやすくご説明します。手術など入院治療が必要と判断した場合は、速やかに連携病院へご紹介します。
高齢の方・抗血栓薬を飲んでいる方は、軽い打撲でも一度ご相談ください。抗血栓薬を飲んでいる方は、軽微な外傷でも頭蓋内出血のリスクが高いため、画像検査を行う基準を下げることが国際的な指針で示されています2。65歳以上であることも、注意すべき要因のひとつです2。
FAQよくある質問
Q. たんこぶができたけど、大丈夫でしょうか?
たんこぶの大きさより、「緊急サインがないか」と「その後の経過」が大切です。
- たんこぶ(皮下血腫)は頭皮の下の出血で、頭の中の出血とは別物です
- 意識・けいれん・くり返す嘔吐・麻痺などの緊急サインがなく、ふだん通り過ごせていれば、まず様子を見てよいことがほとんどです
- 受傷後24時間は大人が付き添い、一人にしないでください12
- 高齢の方・血をサラサラにする薬を飲んでいる方は、症状がなくても一度ご相談ください
Q. いつまで様子を見ればいいですか?
まず24時間、その後も数週間〜数か月は「じわじわ来る変化」に気を配ってください。
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24時間① 大人が付き添い、一人にしない
受傷後24時間は付き添いを12。意識がおかしい・けいれん・くり返す嘔吐・手足の麻痺が出たら、すぐ119番です。
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② 翌日〜数日は「続く・広がる」症状に注意
続く・強くなる頭痛、打った前後の健忘、めまい・吐き気、性格の変化があれば受診してください1。
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数週間後も③ ふらつき・もの忘れのような症状が出たら受診
数週間〜数か月後の変化は慢性硬膜下血腫のサインかもしれません34。治療で改善が期待できる病気なので、遠慮なくご相談ください。
Q. 頭を打った日の夜、眠らせてもいいですか?
眠らせてかまいません。「寝かせてはいけない」というのは俗説です。
- ただし、付き添いの方がそばにいて、ときどき寝息がふだんどおりか・呼びかけに反応するかを確認してください
- 起こしたときに反応がおかしい・呼吸がおかしいときは、すぐ119番です
- あわせて、受傷した当日は飲酒を避け、一人での入浴は控えてください
Q. 数週間前に頭を打ちました。最近ふらつくのは関係ありますか?
関係している可能性があります。受診をおすすめします。
頭をぶつけた数週間〜数か月後に、脳の表面にゆっくり血がたまる慢性硬膜下血腫の典型的な経過と重なります34。歩きにくさ・もの忘れのような症状・がんこな頭痛・片側の手足の動かしにくさが「じわじわ」進むのが特徴です。CT・MRIで確認でき、治療で改善が期待できる病気ですので、「年のせいかな」で済ませずご相談ください。
Q. 血をサラサラにする薬を飲んでいて転びました。症状はありませんが受診すべきですか?
受診をおすすめします。
- 抗血栓薬を飲んでいる方は、軽微な外傷でも頭蓋内出血のリスクが高いことが知られています2
- そのため、症状がなくても画像検査(CTなど)を行う基準を下げるのが国際的な指針の考え方です2
- 数週間〜数か月後の慢性硬膜下血腫のリスクも高いため34、その後の変化にも気を配ってください
- 受診の際は、お薬手帳をお持ちください
- なお、ご自身の判断でお薬を中止しないでください。出血が心配なときも、続ける・止めるの判断は処方した医師や当院にご相談ください
Q. 子どもがサッカーで頭を打ちました。今日の試合に戻れますか?
戻さないでください。脳振盪が疑われる場合、当日の競技復帰はさせないのが国際的な原則です1。
- 意識を失っていなくても、脳振盪は起こります1
- 症状が完全に消えてから、軽い運動→通常練習→競技復帰と段階的に戻します(各段階24時間以上、症状が出たら前の段階へ)1
- 子どもは「出たい」気持ちから症状を隠しがちです。復帰の判断に迷うときはご相談ください