片頭痛の予防薬は、続けられてこそ効く——2つの飲み薬を直接くらべた試験から

コラム

診察室の机をはさんで、白衣の医師と患者が穏やかに向かい合っているイラスト。大きな見出しで「続けられてこそ効く」「片頭痛の予防薬」、机の上には「効きめ」と書かれたカプセルのカードと「続けやすさ」と書かれたカレンダーのカードが2枚並び、患者は「続けやすさ」のカードに手を伸ばしている。手前に「相談する」のラベル、右側に散歩をしている同じ患者の情景がある

この記事の結論

2つの予防薬を直接比べた海外の試験で、24週間のあいだに副作用でやめた方は、一方が12%、もう一方が30%でした。

予防薬は、途中でやめてしまえば効きません。この試験では、やめた方が少なかったほうの薬が、効き目の成績も上でした——飲み薬どうしを「続けられるか」で直接くらべた、初めての試験です。

根拠にした研究Lancet Neurology 2026/TEMPLE試験——12か国の545人を、くじ引きで2つに分けて24週間くらべた試験です1

こんな方に読んでいただきたい記事です

  • 片頭痛の予防のお薬を飲み始めたが、体に合わない気がして、続けるかどうか迷っている
  • 以前に予防のお薬を副作用でやめてしまい、そのまま何も飲まずに過ごしている
  • 頭痛の回数を減らしたいが、副作用が心配で予防薬に踏み切れずにいる

片頭痛の予防薬は、飲み始めても長く続かないことが以前から知られています。過去の調査では、6か月の時点で続いていた方は25〜30%、1年では12〜14%でした1。やめる理由の大きな部分を占めるのが、副作用です。

くらべた2つの飲み薬日本で片頭痛に
使えるか
片頭痛のための新しい飲み薬
アトゲパント
(商品名アクイプタ)
使えます2
もともとてんかんの薬
トピラマート
(商品名トピナ など)
片頭痛の薬としては
承認されていません3

トピラマートは海外では片頭痛の予防にも使われており、この記事の成績はその使い方に基づくものです。

FINDINGSやめた人の数が、2倍以上ちがった

TEMPLE が主役のものさし(主要評価項目)に選んだのは、副作用のために薬をやめた人がどれだけいたかでした1。効き目のほうは、その次に置かれています。

24週間のあいだに副作用でやめた方の割合は、次のとおりです1

新しい
飲み薬
もともと
てんかんの薬
副作用でやめた方12%30%
副作用が出た方56%78%

棒の長さは、割合をそのまま横幅にしたものです。「副作用が出た方」は、薬と関係があると判断されたものの割合です。

続けられた方が多かったのは、新しい飲み薬のほうでした。

効き目も、同じ向きの結果でした。

新しい
飲み薬
もともと
てんかんの薬
片頭痛の日数が月に半分以下まで減った方64%39%
月あたりの片頭痛の日数の減り(4〜6か月目)6.3日減4.5日減
頭痛による生活のしづらさ11.7点下がった7.4点下がった
24週の時点で「かなり良くなった/とても良くなった」と答えた方69%37%

「頭痛による生活のしづらさ」は、6つの質問に答えて点数にするものさし(HIT-6)です。36点から78点のあいだで、点数が下がるほど楽になります4。60点以上は生活への影響が重い範囲とされ4、参加した方は始める前が平均64.6点でした1

参加した方は、もともと月に11.0日ほど片頭痛がありました1。そこから6.3日減るというのは、半分以下の4〜5日になるということです。

やめてしまう時期にも、はっきりした特徴がありました。もともとてんかんの薬のグループで副作用による中止が集中したのは、量を少しずつ増やしていく最初の6週間でした1。飲み始めのころが、いちばんのヤマ場だったことになります。

副作用について、先にお伝えしておきたいこと

副作用は、どちらの薬にもあります。違うのは出方です。新しい飲み薬では吐き気(20%)と便秘(10%)が、もともとてんかんの薬では手足のしびれ・ぴりぴり感(41%)が目立ちました1

妊娠中の方・妊娠を希望している方・授乳中の方は、必ずお申し出ください。予防薬は、種類によって妊娠中の扱いが大きく違います。新しい飲み薬(アトゲパント)も、妊娠中は治療の利益が危険性を上回るときに限って使うお薬とされています2。予防薬を選ぶうえで欠かせない情報ですので、遠慮なくお伝えください。

もう少し詳しく知りたい方へ(読み飛ばして構いません)

どんな試験だったか

545人がくじ引きで2つのグループに分けられ、540人が集計の対象になりました1。参加者の28%は、月の頭痛が15日以上ある「慢性片頭痛」の方で、40%は過去に予防薬を使ったことがありました。

本文の割合のもとになった人数は、次のとおりです1。副作用でやめた方は、新しい飲み薬が273人中33人、もともとてんかんの薬が267人中79人。片頭痛の日数が半分以下まで減った方は、新しい飲み薬が270人中173人、もともとてんかんの薬が257人中101人でした。

どちらの薬を飲んでいるかは、本人にも医師にも分からないようにしてありました(ダミーの薬を組み合わせる方法)1。24週間の比較のあとも薬を続ける期間がありますが、結果はまだ出ていません1

どんな副作用が出たか

出方の中身が、かなり違いました1

出た症状新しい
飲み薬
もともと
てんかん
の薬
手足のしびれ・ぴりぴり感5%41%
吐き気20%16%
だるさ15%14%
集中しにくさ7%10%
便秘10%5%
食欲が落ちる12%10%

しびれ・ぴりぴり感の差が大きく、やめる方が多かった理由のひとつと考えられます。一方で、吐き気と便秘は新しい飲み薬のほうが多く出ています。

入院が必要になるような重い症状は、新しい飲み薬で6人、もともとてんかんの薬で3人に起きました1。そのうち薬と関係があると判断されたのは1件(新しい飲み薬での、急激なアレルギー反応=アナフィラキシー)です。試験の期間中に亡くなった方はいませんでした。体重は、新しい飲み薬で1.5kg、もともとてんかんの薬で1.9kg減っており、ほぼ同じでした。

効きはじめの早さ

「6.3日減/4.5日減」は、4〜6か月目を平均した数字です。月ごとに分けると、別の景色が出てきます1

新しい飲み薬は、飲み始めて1か月の時点ですでに4.7日減っていました(このときもともとてんかんの薬は2.4日減)1。もともとてんかんの薬が4.7日まで減ったのは6か月後です(このとき新しい飲み薬は6.4日減)1。同じところに届くまでの時間が違いました。

TODAY予防薬をやめた方・やめたい方が、今日できること

この試験がはっきりさせたのは、「続けられなかったことは、あなたの根性の問題ではない」ということです。薬によって、副作用でやめる方の割合が2倍以上違いました。だからこそ、次の3つが意味を持ちます。

作戦1

副作用でやめたこと・やめたいことを、そのまま伝える

  • 我慢して続けるのも、黙ってやめるのも、どちらもすすめられません。
  • 「いつから」「どんな症状が」「どれくらいつらかったか」が分かれば、量や飲む時間の調整、別の薬への切り替えができます。
今日の一手

次の受診でいちばん最初に言う一言を決めてください。「前に◯◯でやめました」でも、「いま△△がつらいです」でも構いません。

作戦2

頭痛のあった日を記録する

  • 予防薬が効いているかは、痛みの強さではなく「月に何日、頭痛があったか」で判断します。この試験でも、効き目のものさしは日数でした1
  • 飲み始める前の1か月ぶんがあると、比べるものができます。
今日の一手

カレンダーを開いて、今日、頭痛があったかどうかを書き入れてください。

作戦3

効いているかどうかは、3か月で見直すと知っておく

  • 新しい飲み薬は、1か月ですでに片頭痛の日数が4.7日減っていました1
  • それでも、続けるかどうかを見直す目安は3か月とされています2。1か月で見切る必要はありません。
今日の一手

「3か月は続けて様子を見る」と、今日のうちに決めておいてください。

PERSPECTIVEこの結果を日本で読むときの注意点

新しい飲み薬(アトゲパント)は、日本でも「片頭痛発作の発症抑制」のお薬として承認されています2。ただし、この試験の結果をそのまま「新しい薬のほうがよい」と読むには、知っておいていただきたい事情があります。次の2つがとくに大事で、あと2つは折りたたみにまとめました。いずれも論文自身が挙げているものです1

日本の方は参加していません。12か国はヨーロッパ・カナダ・イスラエルで、参加者の96%が白人、89%が女性でした1。副作用の出方が変わる可能性は残ります。ただし新しい飲み薬(アトゲパント)そのものは、日本人を対象にした試験が別に行われています2

研究の読み方として、もう2つ(読み飛ばして構いません)

「飲まないグループ」がありません。2つの薬どうしの比較なので、「副作用が出ると思って飲むと実際に出やすくなる」という心の働きが、どれくらい混じっているかは分かりません。

副作用が出ても、量を減らせない決まりでした。実際の診療では、まず減らすという手があります1。やめた方の割合の差は、実際の診療ではここまで大きくならないかもしれません(ここは当院の読み解きです)。

新しい薬を作った製薬会社が費用を出しています。著者13人のうち7人が同社の社員で、試験の設計・解析にも関わっています1。方法そのものは厳密ですが、この背景は知ったうえで読む必要があります。

片頭痛の予防には、この2つのほかにも注射の薬など複数の選択肢があります。お薬の全体像、飲む予防薬を長く続けたときの記録、注射の予防薬について、それぞれ記事があります。

片頭痛のお薬、「何が違うの?」 片頭痛の「飲む予防薬」は長く続けても大丈夫? 片頭痛の予防注射、2年続けるとどうなる?

GUIDEこんなときは一度ご相談ください

ご相談の目安

1つでも当てはまれば、ご相談ください。

受診されたときの進め方

  1. 頭痛の日数と、これまでのお薬を確認します初診の日——記録とお薬手帳をもとに、いまの状態を整理します
  2. 予防薬を使うかどうかを一緒に決めます初診の日——回数・生活への支障・これまでの副作用を合わせて判断します
  3. 飲み始めたあとは、続けられているかを見ます2週間ごと——効き目だけでなく、体に合っているかも確認して調整します。新しい飲み薬(アトゲパント)を始めた場合は、しばらく2週間ごとの受診になり、効いているかどうかは3か月を目安に見ます2

受診のときにお持ちください

これらがあると、初回から具体的にご相談いただけます。とくに「以前この薬でこんな症状が出た」という情報は、次の薬を選ぶときにいちばん役に立ちます。

FAQよくあるご質問

Q. この新しい飲み薬は、日本でも使えますか。当院で出してもらえますか。

はい。この記事で紹介した新しい飲み薬(アトゲパント、商品名アクイプタ)は、日本でも「片頭痛発作の発症抑制」のお薬として承認されており2、当院でも処方できます。

ただし、ご希望があればすぐお出しできるお薬ではありません。添付文書では、片頭痛の発作が月に複数回以上ある(または慢性片頭痛である)ことを診察で確かめることと、発作が起きたときのお薬などを適切に使ってもなお日常生活に支障があることの2つを確かめたうえで使うこととされています2。まずは、頭痛の回数と、いまのお薬で足りているかを診察で整理するところから始めます。

もう1つ、発売からまもないお薬のため、当面は1回の処方が14日分までと決められています2。しばらくは2週間ごとの受診になります(期間の限られた決まりで、いずれ解除されます)。

Q. 副作用が出たら、自分でやめてよいですか。

まずご連絡ください。ただし、じんましんや発疹、息苦しさ、顔のはれは急激なアレルギー反応のサインですので、このときだけは飲むのを中止するのが先です2(そのうえでご連絡ください。診療時間外は救急外来へ)。

それ以外の副作用では、量を減らす、飲む時間を変える、別の種類に替えるといった調整で続けられることがあります。この試験では、量を増やす速さはゆるめられても、減らすことは認められていませんでした1。実際の診療には、その選択肢があります。ただし、我慢して飲み続けることもすすめられません。つらいと感じた時点でご相談ください。

Q. 予防薬の効果は、どれくらいで分かりますか。

この試験では、新しい飲み薬を飲み始めて1か月の時点で、片頭痛の日数が4.7日減っていました1。ただし薬によって効きはじめの早さは違います。この新しい飲み薬では、飲み始めて3か月を目安に効いているかどうかを評価し、改善がなければ続けるかどうかを見直すことになっています2。1か月で見切る必要はありません。判断のためには、飲み始める前と後の頭痛の日数を比べられるようにしておくことが大切です。

Q. 飲み薬と注射の予防薬では、どちらがよいのですか。

この試験は飲み薬どうしを比べたもので、注射との比較はしていません1。飲み薬と注射のどちらが向いているかは、頭痛の回数・これまでに試した薬・通院のしやすさなどから一緒に決めていきます。注射の予防薬については、次の記事で扱っています。

片頭痛の予防注射、2年続けるとどうなる?

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