片頭痛と妊娠・授乳使える薬・避ける薬と、つらいときの工夫
コラムテーマ:治療(お薬)・生活指導
「妊娠中に頭痛がきても、薬を飲んで赤ちゃんに影響しないか心配」「授乳中だから我慢するしかない」――そんな声をよく伺います。
でも、つらい発作を無理に我慢する必要はありません。多くの方は妊娠が進むと片頭痛がやわらぎますが、それでもつらいときには、妊娠・授乳と相性のよい薬や工夫があります。
大切なのは、自分で市販薬を飲み続けず、主治医(脳神経外科・産科)と一緒に選ぶこと。我慢して悪化させる前に、まずご相談ください。
妊娠すると片頭痛はどうなる?
- 妊娠中は、多くの方で片頭痛の回数や強さがやわらぐ傾向があります(特に前兆のないタイプ、妊娠中期以降)。
- 一方で、出産後は数週のうちに戻りやすいことも知られています。産後も油断せず、つらいときは相談を。
- 前兆のある片頭痛の方は、妊娠高血圧腎症(むくみや血圧上昇が起こる妊娠の合併症)・脳卒中・早産などとわずかに関連するという報告があります1。過度に心配する必要はありませんが、妊婦健診をきちんと受け、血圧をみてもらうことが何よりの備えになります。
まずは「薬に頼らない工夫」から妊娠中の第一選択
妊娠中は、薬を使わない対処を第一に考えます12。発作の予防にも、軽い発作をやわらげるのにも役立ちます。
| 工夫 | ポイント |
| 規則正しい睡眠・食事 | 寝不足・寝過ぎ、食事を抜くことは引き金になりやすい |
| 水分をこまめに/空腹を避ける | 脱水・低血糖は発作の誘因。つわりの時期は特に意識を |
| 痛むときは冷やす・暗く静かな場所で休む | 光・音・においの刺激を避けると楽になりやすい |
| 深呼吸・リラックス法でストレスケア | 呼吸法やリラクセーションなどの行動療法も有効2 |
発作がつらいとき、妊娠中に使える薬は?
それでもつらいときは、安全性のデータがある薬から、医師と相談して使います。市販薬を自分の判断で飲み続けるのは避けてください。
| 薬の種類 | 妊娠中の扱い |
| アセトアミノフェン市販薬では「カロナール」などの名前で売られています | 第一選択。妊娠中の痛み・発熱に最もよく使われ、医師も使いやすいと考える薬38。必要なときに最小限・短期間で |
| NSAIDsイブプロフェンなどの解熱鎮痛薬 | 妊娠中はできるだけ避けたい薬。使うとしても初期〜中期に医師の判断で短期間だけ。妊娠20週以降は原則避け、特に後期(30週以降)は使いません45 |
| トリプタン片頭痛専用の発作止め | ふだん使っている方も、妊娠中は自分の判断で飲まないこと。これまでの観察研究で奇形の明らかな増加は示されていませんが、確立した安全性データはありません1。つらい発作は医師に相談を(医師の判断で使える場合もあります) |
| 吐き気止め制吐薬 | 吐き気が強いとき、妊娠中でも使える薬を医師が処方します。薬を飲み込めない・吐いてしまうときは、座薬など別の方法も相談できます |
「市販の鎮痛薬を痛むたびに飲む」のは避けてください
飲む回数が増えると、かえって頭痛が慢性化する「薬の使いすぎによる頭痛」を招くことがあります。市販薬を使ってよいか・どの薬かは、飲む前に薬剤師か主治医にご確認ください。
予防が必要なとき(妊娠中)
月に何度も寝込む、発作止めだけでは追いつかない――そんなときは「予防」を考えます。妊娠中は、まず薬を使わない方法を基本にし、薬が必要なときも相性のよいものを慎重に選びます。
| 予防薬 | 妊娠中の扱い |
| 候補になる薬(医師と相談のうえ) |
| プロプラノロール血圧の薬の一種 | 妊娠中の予防の候補になります |
| 少量の抗うつ薬アミトリプチリン | 妊娠中の予防の候補になります5 |
| マグネシウム経口の補充 | 候補になります。自己判断での高用量サプリは避けてください3 |
| 妊娠中は使わない薬 |
| バルプロ酸/トピラマート | 赤ちゃんへの影響のため使えません6 |
| ロメリジンなど一部の予防薬 | 妊娠中は使いません |
| 抗CGRP関連薬新しい注射・飲み薬 | 妊娠中のデータが不足しており、原則使いません(くわしくは次の章) |
新しい予防薬(抗CGRP関連薬)妊娠中・授乳中はどうする?
片頭痛には、近年広がっている新しい予防薬「抗CGRP関連薬」があります。月1回などの注射(モノクローナル抗体)と、毎日・隔日でのむ飲み薬(ゲパント)があります(くわしくは当院の片頭痛のページをご覧ください)。妊娠・授乳との関係では、次の点に注意します。
- 妊娠中・授乳中は、原則として使いません。赤ちゃんへの安全性がまだ十分に分かっていないためです1910。
- これらは妊娠できる世代の方によく使われる薬です。使っていて妊娠を希望する場合は、自分の判断でやめたり続けたりせず、計画の段階で主治医に「いつ・どうやめるか」を相談してください。特に注射は長く効くようにつくられているため、前もっての相談が大切です19。
- 使っている間に妊娠がわかったときも、あわてないでください。これらの薬の妊娠中の安全性はまだ確立していませんが、注射薬(モノクローナル抗体)については、これまでの限られた報告で流産や赤ちゃんの異常が明らかに増えるとは確認されていません。安全と分かったわけではないので、わかった時点で自分の判断で続けず、主治医に相談しましょう9。
授乳中はどうする?
授乳中も、頭痛を我慢する必要はありません。授乳中は「母乳に移りにくい薬」を、医師と相談して選びます1。
| 薬 | 授乳中の扱い |
| アセトアミノフェン/イブプロフェン | 授乳中も比較的使いやすいとされますが、使ってよいかは医師に相談を |
| トリプタンスマトリプタンなど | スマトリプタンは母乳への移行がごくわずかとされ、主治医が授乳中の選択肢として挙げることがあります7。薬によっては国内の説明書で数時間授乳を控える案内もあり、その間は搾乳やミルクで対応できます。どうするかは主治医に確認を8 |
| 予防薬 | 授乳中でも使える選択肢があります。自分で判断せず医師と相談を |
こんな頭痛は「すぐ受診」を妊娠中・産後の危険サイン
妊娠中・産後は、ふだんの片頭痛とは別の、急いで対応すべき頭痛が隠れていることがあります。次のサインがあるときは、様子を見ずに、ただちに受診してください(夜間・休日は救急へ連絡を)。
ためらわず受診すべきサイン
- これまで経験したことのない、突然の激しい頭痛(短い時間で痛みがピークに達する)
- 頭痛とともに、血圧の上昇・強いむくみ・目のちらつき(妊娠高血圧腎症のサイン)
- 手足の力が入らない・ろれつが回らない・見え方の変化・意識がおかしい
- けいれんを伴う/高熱を伴う
- 産後に新しく出た頭痛、または以前よりずっと強い頭痛(産後も油断しない)
よくある質問
Q. 妊娠に気づかず頭痛薬を飲んでしまいました。大丈夫?
多くの市販鎮痛薬は、ごく初期には影響しにくいとされています。過度に心配しなくてよいことが多いですが、不安な点は主治医に伝え、同じ薬を自分の判断で繰り返さないようにしましょう。
Q. 授乳中に痛み止めを飲んだら、母乳はあげない方がいい?
アセトアミノフェンなどは授乳中も比較的使いやすいとされ、トリプタンも種類によっては母乳移行がごくわずかです7。ただし使うかどうか・どの薬かは、必ず主治医に確認してください。
Q. 市販の頭痛薬を、妊娠中ずっと使っても平気?
自分の判断での飲み続けは避けてください。特にNSAIDs(イブプロフェンなど)は妊娠20週以降は原則避けるのが基本です4。回数が増えてきたら、薬の見直しのため受診を。
まとめ
- 妊娠中は片頭痛がやわらぐ方が多いですが、つらい発作は我慢しなくて大丈夫です。
- 妊娠中の発作はアセトアミノフェンが第一選択。NSAIDsは時期に注意(20週以降は原則避ける)、トリプタンは自己判断で飲まず医師と相談を。
- 授乳はやめなくてよいことがほとんど。母乳に移りにくい薬を選べます。
- いちばん大切なのは、自分で判断せず主治医(脳神経外科・産科)と一緒に決めること。妊娠を希望する段階からのご相談も歓迎します。
受診をご検討の方へ
今使っている頭痛薬の名前・飲んでいる回数・妊娠週数(または授乳中であること)をメモしてお越しいただくと、診察がスムーズです。
つつみ脳神経外科クリニックでは、妊娠・授乳中の頭痛について、必要に応じて産科と連携しながらご相談に応じます。産科にかかっている方も、頭痛のご相談はお気軽にどうぞ。