片頭痛の「飲む予防薬」は長く続けても大丈夫?1年近く続けた人たちの記録から
コラムテーマ:予防・治療(薬物)
この記事の結論
日本で1年近く続けた458人の記録では、体調の変化でお薬をやめた方は1%でした。片頭痛の日数も、半分以下になった方が55%います。
わかっている範囲は1年ほどまでなので、3か月をめどに効きを確かめながら、続けるかを決めていきます。
こんな方に読んでいただきたい記事です
- 月に何度も片頭痛があり、予防のお薬を考えはじめている
- すでに飲む予防薬を続けていて、長く飲んで体に悪くないかが気になっている
- 新しい飲み薬が出たと聞いたが、実際にどのくらい効くのかを知りたい
月に何度も片頭痛があり、そのたびに予定を諦めている——そんな方に向けて、片頭痛を「起こりにくくする」お薬の話です。
片頭痛の予防薬にはもともと飲み薬と注射があります6。そこへ2025年、痛みを伝える物質のはたらきを直接ブロックする新しいタイプの飲み薬が加わりました。リメゲパント(商品名:ナルティークOD錠75mg)というお薬です5。
予防薬は、痛くない日も飲み続けるお薬です。長く飲んで体に悪くないのか。1年近くのデータが出そろったので、効き方の実際と合わせてお伝えします1。
HOW TO TAKE予防薬の飲み方は「1日おき」発作が起きたときの飲み方とは、別に決められています
片頭痛は、頭の血管のまわりの神経から出る「痛みを伝える物質(CGRP といいます)」がきっかけのひとつと考えられています。このお薬はその物質のはたらきをブロックするタイプです。
| 目的 | 飲み方5 |
発作が起きた ときの治療 | 発作のときに1回75mg |
発作を起こり にくくする(予防) | 75mgを1日おき(隔日)。月・水・金…のように1日空けます |
FINDINGS1年近く続けた人に、何が起きたか効き方の実際と、体への負担
どのくらい効いたか
日本で行われた試験で、1日おきの予防を続けた458人の記録です1。
| 項目 | 治療前 → 治療後 |
1か月あたりの 片頭痛の日数 | 9.2日 → 4.6日 |
頭痛のときに 薬を使う日 | 月7.8日 → 月3.7日 |
片頭痛の日数が 半分以下になった人 | 55% |
ただし、この記録には比べる相手(お薬を飲まないグループ)がいません。自然な波や、「治療を受けている」という安心感の分も混ざります。実際、偽薬(見た目が同じダミーの薬)を飲んだ人でも頭痛の日数は減ることがわかっており4、お薬そのものの上乗せ分は、比較試験では月1日前後でした24。
半数以上で日数が半分になった、というのが実際の記録です。効き方には個人差があります。
体に負担はなかったか
| 項目 | 日本 458人1 |
お薬と関係があると 判断された体調の変化 | 10%何らかの体調の変化があった人は74%。内訳はかぜやコロナが中心です |
体調の変化で お薬をやめた人 | 1%(6人) |
| 重い出来事命に関わる・入院が必要・後遺症が残るなど | 1%(4件。いずれも回復しました) |
よくみられた 出来事 | かぜ症状 25%、 新型コロナ感染 13% |
| 肝臓の数値 | 基準値の3倍を超えた方が1%(4人)。肝障害を疑う組み合わせはなし |
最後まで 続けられた人 | 92% |
「何らかの体調の変化」が7割を超えるのは多く見えますが、3か月の比較試験では55%、偽薬を飲んだ人でも41%でした2。長い期間を過ごせば誰にでも何かは起こる、と考えていいかもしれません。
もう少し詳しく知りたい方へ(読み飛ばして構いません)
- 続けることを選んだ人の記録です13。比較試験を終えて、なお続けることにした方が対象なので、良い方向に数字が寄りやすくなります。飲んでいることを本人も医師も知ったうえでの記録である点も同じ方向に働きます(頭痛の日数はご本人の申告で数えるためです)。
- まれな副作用と、1年より先のことはわかりません。数百人を1年ほどみた結果なので、何千人に1人という稀な副作用や、それより長く続けたときのことは、まだわかっていません。
- 対象は、中等度以上の痛みの発作が月に4〜18回ある方でした12。頭痛の日数が月に19日以上ある方や、心臓・血管の病気が安定していない方は、この研究には参加していません1。ただし慢性片頭痛の経過がある方は3割ほど含まれており1、日本の添付文書でも慢性片頭痛は使用を検討する対象とされています5。
GUIDE予防を考える目安こんなときは一度ご相談ください
日本のガイドラインをふまえると、次のような場合は予防のお薬を考える目安になります。
- 片頭痛の発作が月2回以上ある6
- 頭痛のために、仕事や家事、予定を月に3日以上あきらめている6
- 痛み止めを飲む日が多く、3か月を超えて続いている6
- 月に15日以上
- トリプタンや、カフェインなど複数の成分が入った市販の鎮痛薬なら月に10日以上
- お薬の使いすぎで、かえって頭痛が起こりやすくなることがあります
- 予防薬を試したが、効きが足りない、または副作用がつらい
START & STOP始めるとき、やめるとき効いたかどうかは3か月をめどに判断します
- 効いたかどうかの判断は3か月をめどに行います5
- 1〜2週間では判断できません
- 改善が見られない場合は、中止や他の方法を検討します5
- その後も定期的に、続ける必要があるかを見直します。発作が減って生活に支障がなくなれば、やめることも検討します5
- ご自分の判断で中止・減量・増量はせず、診察のうえで決めさせてください
つまり「一度始めたら一生飲み続ける薬」ではありません。
CAUTION使えない方・注意が必要な方妊娠・授乳、飲み合わせ、アレルギーのサイン
次にあてはまる方は、必ずお申し出ください。使えるかどうかを含めて、相談のうえで決めます5。
- 妊娠中の方、妊娠を考えている方、授乳中の方
- 肝臓や腎臓のはたらきが落ちている方
- 小児(子ども)
- ほかに飲んでいるお薬がある方
受診のときは、市販薬・サプリメント・健康食品を含め、いま飲んでいるものをすべてお知らせください。
添付文書で「1%以上」の頻度で挙げられている副作用は便秘です5。また、呼吸困難や発疹といったアレルギー反応が出ることがあり、飲みはじめてから数日後に症状が出て、重いアレルギー反応に至ることもあると記載されています5。
FAQよくある質問
Q. 保険は使えますか。費用はどのくらいですか。
健康保険で使えるお薬です。続けたときの費用の目安や通院の間隔は、診察の際にお伝えできますので、気兼ねなくお尋ねください。
Q. いま使っている発作止め(トリプタンなど)はどうなりますか。
予防を始めても発作がゼロになるわけではないため、発作時のお薬は原則そのまま持っておいていただきます。ただしこのお薬自体が発作時にも使えるため、1日に飲む合計が1回を超えないよう、組み合わせ方は必ず診察で決めます5。
Q. いま飲んでいる予防薬から替えたほうがいいですか。
今の治療で落ち着いているなら、替える必要はありません。効きが足りない、副作用がつらい、というときにご相談ください。
OUR CLINIC当院でできること
つつみ脳神経外科クリニックでは、この飲む予防薬を含めた片頭痛の予防治療のご相談をお受けしています。予防のお薬は、片頭痛という診断がついていることと、生活の工夫や発作時のお薬の使い方を整えたうえでなお支障があることが出発点になります5。
そのため診察では、まず問診と診察で頭痛のタイプを確かめ、いま使っている発作時のお薬や生活面の工夫が合っているかを見直すところから始めます。そのうえで、予防が必要か、どの方法が合うかを一緒に決めていきます。
- 頭痛のタイプの確認(問診と診察)
- 発作時のお薬・生活面の工夫の見直し
- 予防が必要か、どの方法が合うかのご相談
受診の際に、頭痛のあった日付・つらさ・痛み止めを飲んだ日をメモしてお持ちいただけると、その日の相談がぐっと具体的になります。
WARNING SIGNSすぐに救急要請が必要なサイン
以下にあてはまるときはすぐに119番・救急要請を
- 突然始まる、これまでにないほど激しい頭痛(バットで殴られたような痛み)
- 手足のしびれ・麻痺、ろれつが回らない、顔のゆがみを伴う
- 意識がもうろうとする、けいれんが止まらない
- 高熱や首のこわばりを伴う頭痛
- 50歳を過ぎて初めて経験する強い頭痛・いつもと違う頭痛