神経難病運動神経・自律神経・免疫の働きを支える指定難病 7 疾患早期発見と専門医連携で生活を支える
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扱う神経難病神経変性 4 疾患 → 神経免疫 3 疾患の順で並べています
下の項目は、上から順に神経変性 4 疾患(ゆっくり神経細胞が傷んでいくタイプ)、区切り線をはさんで神経免疫 3 疾患(免疫の誤作動で神経が障害されるタイプ)を配置しています。それぞれの代表的な手がかりを、項目見出しの日本語病名+略語で示します。
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筋萎縮性側索硬化症 / ALS
指定難病 2
手足の力が入りにくくなり、筋肉がやせていく
片手・片足の力が抜ける感覚から始まり、月単位で他の部位に広がる。筋肉がやせて、皮膚の下でピクピク動くのが特徴。
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最初は片手の力が入りにくい・足が引っかかる、といった限局した筋力低下から始まり、しだいに同側の他部位、対側、別の領域へと広がっていきます。感覚障害や眼球運動障害が出にくい点が、診断の手がかりです。確定診断は脳神経専門病院で電気生理検査(針筋電図)を行います。
- 左右非対称・遠位優位の筋力低下と筋萎縮から始まることが多い
- 筋肉が皮膚の下でピクピク動く現象(線維束性収縮)が太ももの内側・肩のあたりなどで目立つ
- 球症状(構音障害・嚥下障害)を伴うと、誤嚥や栄養障害のリスクが高まる
- 感覚障害・膀胱直腸障害・小脳症状が乏しいのが特徴
- 治療:リルゾール・エダラボン・メコバラミン、症状に応じた呼吸・栄養管理
進行性核上性麻痺 / PSP
指定難病 5
早期からの後方転倒と眼の動きの障害
病初期から転びやすさ(特に後方)が目立ち、視線を下に動かしにくくなる病気。レボドパ(パーキンソン病の代表的な内服薬)が効きにくいのが特徴。
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パーキンソン病とは違い、発症 1〜2 年以内に頻回に転倒し、後方に倒れることが多いのが特徴です。眼が下を向きにくくなる「核上性注視麻痺」も診断の手がかりで、神経内科の専門医による診察が大切です。
- 発症早期からの後方転倒・姿勢反射障害
- 左右対称・体軸(首・胴体)優位の筋強剛、首が後ろに反りやすい(項部後屈位)
- 下方視ができにくい・瞬きが少ない(核上性注視麻痺)
- 嚥下障害・構音障害が比較的早く出る
- 頭部 MRI で中脳の萎縮(ハチドリのくちばし様)
大脳皮質基底核変性症 / CBD
指定難病 7
左右差の強い動きの障害+大脳皮質症状
特徴は左右差の強い動きの障害に、手を思った通りに動かせない・物の使い方が分からないといった大脳皮質症状が加わる病気。
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「片側だけ手の動きがぎこちない」「自分の手なのに思った動作ができない(肢節運動失行)」「自分の手が勝手に動くように感じる(他人の手徴候)」といった大脳皮質症状を伴います。レボドパ(内服薬)の効果は限られるため、症状ごとの対応とリハビリ・生活の工夫を中心に進めていきます。
- 左右非対称が強い無動・筋強剛・ジストニア・ミオクローヌス
- 肢節運動失行・他人の手徴候・皮質性感覚障害(大脳皮質症状)
- 頭部 MRI で一側優位の大脳萎縮(前頭・頭頂葉)
- 治療:抗コリン薬・ボツリヌス療法・クロナゼパムなど症状ごとに選択
多系統萎縮症 / MSA
指定難病 17
自律神経障害+小脳症状/パーキンソニズム
早期から立ちくらみ・排尿障害が目立ち、ふらつき(小脳失調)か動きの遅さ(パーキンソニズム)が前面に出る病気。
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起立時の強い立ちくらみ、排尿障害、ふらふら歩き、いびきや吸気時の喘鳴などが組み合わさるとき、多系統萎縮症を考えます。レボドパ(内服薬)の効きは限られ、進行はパーキンソン病より速いのが特徴です。脊髄小脳変性症(SCD、指定難病 18)とも鑑別が必要となります。
- 起立後すぐの強い立ちくらみ・失神(収縮期 30 mmHg 以上の低下)
- 頻尿・尿失禁・排尿障害(運動症状に先行することが多い)
- 小脳失調が主体のタイプ(MSA-C)と、無動・体軸性筋強剛が主体のタイプ(MSA-P)に分かれる
- 夜間の大きないびき・吸気時喘鳴(声帯開大不全)
- 頭部 MRI で橋・中小脳脚の萎縮
神経免疫疾患
重症筋無力症 / MG
指定難病 11
日内変動を伴う筋力の易疲労性
特徴は夕方になるとまぶたが下がる・物が二重に見える・しゃべりにくくなる、という使うほど疲れて、休むと回復する筋力低下が特徴。
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神経と筋肉の接続部(神経筋接合部)で抗 AChR 抗体・抗 MuSK 抗体がアセチルコリン受容体の働きを邪魔し、筋肉が収縮しにくくなる病気です。初発症状は眼瞼下垂・複視が約半数と多く、進行すると球症状(飲み込み・発声)や呼吸困難(クリーゼ)に至ることもあります。新しい補体阻害薬・抗 FcRn 薬で治療選択肢が広がっています。
- 眼瞼下垂・複視(特に夕方に悪化、休息で改善)
- 嚥下障害・構音障害・頸部前屈の筋力低下
- 抗 AChR 抗体・抗 MuSK 抗体の検査、反復神経刺激試験で減衰確認
- 治療:コリンエステラーゼ阻害薬・ステロイド・免疫抑制薬・血漿交換・IVIg・補体阻害薬・胸腺摘出
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多発性硬化症 / MS
指定難病 13
中枢神経の脱髄が時間的・空間的に多発
若年〜中年女性に多く、視力低下・複視・しびれ・脱力が再発と寛解を繰り返す、中枢神経の脱髄疾患。
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脳・脊髄・視神経の髄鞘(神経のさや)が炎症で壊れ、神経の信号が伝わりにくくなる病気です。同じ場所が繰り返し障害されるのではなく、時間的にも空間的にも別の場所に病変が出るのが特徴で、MRI と髄液検査で診断します。新しい疾患修飾薬(DMT)が多数承認され、早期治療で進行抑制が期待できます。
- 視神経炎による視力低下・眼球運動痛、複視、片麻痺、感覚障害、膀胱直腸障害、小脳失調
- 入浴・運動で症状が一時的に悪化する(Uhthoff 徴候)、首を前に曲げると電気が走る(Lhermitte 徴候)
- MRI で時間的・空間的多発性
- 髄液で IgG index・オリゴクローナルバンド陽性(80〜90%)
- 治療:急性期はステロイドパルス、再発予防に DMT(抗体製剤など)
- EDSS 4.5 以上で難病申請の基準を満たす(自力歩行 300 m 程度)
視神経脊髄炎スペクトラム障害 / NMOSD
指定難病 13
AQP4 抗体陽性、重症の視神経炎・縦長脊髄炎
アクアポリン 4 抗体が病態の中心で、重症の視神経炎や3 椎体以上にわたる長い脊髄炎が特徴。MS とは治療が異なる。
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中枢神経の脱髄疾患という点では MS と似ていますが、病態の本体はアストロサイトに発現する AQP4(アクアポリン 4)に対する自己抗体で、MS とは病態・治療・予後が大きく異なります。
- 重症の視神経炎(両側性・視交叉に及ぶ・視力予後が悪い)
- 縦長横断性脊髄炎(3 椎体以上にわたる脊髄病変)
- 治まりにくい嘔吐・しゃっくり・嚥下障害(最後野症候群)
- 抗 AQP4 抗体(IgG)の測定が診断の柱、MOG 抗体陽性は MOGAD として別扱い
- 治療:急性期はステロイドパルス・血漿交換、再発予防に抗 CD19/20 抗体・補体阻害薬・IL-6 阻害薬
当院の役割早期発見・経過観察・専門施設への橋渡し
神経難病は確定診断・高度治療を専門施設で行うことが多い疾患群ですが、最初の気づきと早期紹介、そして地域での経過観察・難病申請・全身管理は、かかりつけ医の重要な役割です。
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初期評価と早期紹介
問診と神経学的診察で疾患のあたりをつけ、院内 MRI・採血で他疾患を除外します。神経伝導検査・針筋電図・自己抗体検査などの精密検査や、確定診断・高度治療が必要な場合は、脳神経専門病院に速やかに紹介します。
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経過観察と地域での主治医機能
専門施設での治療方針が決まったあとは、地域での通院・服薬管理・症状の変化のフォローを担います。増悪因子(感染・誤った薬剤)の監視と、必要時の早期介入で日常生活を支えます。
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難病申請の臨床調査個人票
指定難病の医療費助成申請に必要な臨床調査個人票(診断書)の記載を行います。重症度認定基準を踏まえた評価で、適切な助成区分につなげます。
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全身管理と合併症予防
嚥下障害がある方の誤嚥性肺炎予防、運動制限のある方の褥瘡・廃用症候群予防、ステロイド・免疫抑制薬使用中の感染症・骨粗鬆症・糖尿病管理など、全身合併症を一元管理します。
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家族・介護者支援
進行性の経過をたどる疾患では、ご家族の不安や介護負担も大きくなります。介護保険・身体障害者手帳・在宅医療資源の利用についても、ケアマネジャー・訪問看護・難病相談支援センターと連携して支援します。
救急対応が必要なサイン様子見せず救急要請を
神経難病の経過中に、以下の症状が急に出たり悪化したりした場合は、119 番または救急要請を優先してください。
よくある質問
神経難病と診断されたら、もう治らないのですか?
「治らない」と一括りにできる病気ではありません。疾患ごとに進行スピード・治療選択肢・予後は大きく異なり、早期治療で進行を抑えられる疾患も増えてきています。
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早期治療① MG/MS/NMOSD は早期治療で進行抑制が期待できる
神経免疫疾患は適切な免疫治療で再発予防・寛解維持が可能で、早期に治療を開始するほど長期予後が良好です。
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② ALS/MSA/PSP/CBD は症状緩和・進行抑制と生活支援が中心
神経変性疾患は完治させる治療はまだありませんが、リルゾール・エダラボン(ALS)など病態修飾薬や、症状ごとの対症療法、リハビリ・栄養管理・呼吸管理で生活の質を保つ工夫が確立されています。
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③ 経過には個人差が大きい
同じ疾患でも進行速度や症状の出かたには個人差があり、画一的な予後を当てはめることはできません。継続的なフォローで日常生活を保てる方も多くいらっしゃいます。
指定難病の医療費助成は、どうやって申請するのですか?
指定医(神経内科専門医など)の診断書+市町村窓口での申請が必要です。当院でも臨床調査個人票(診断書)の記載を行います。
申請の流れ:
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① 主治医に診断書作成を依頼
指定医が「臨床調査個人票」を作成します。当院でも記載対応しています。
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② 市町村の保健福祉窓口で申請書類を入手
お住まいの市町村の窓口で、所定の申請書類一式を受け取ります。
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③ 必要書類を添えて提出
診断書・申請書・住民票・所得証明・健康保険証の写しなどを揃えて提出します。
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④ 都道府県の審査を経て医療受給者証が交付
審査には 2〜3 ヶ月かかることが一般的です。重症度認定基準を満たすかどうかが助成区分を決めます。
詳しくは難病情報センターでも確認できます。
大学病院や難病センターに紹介されたあとも、当院に通って良いのですか?
はい、ぜひ並行して通院してください。専門施設は確定診断・高度治療の決定・難治例の管理を担い、当院は地域での経過観察・服薬管理・全身合併症対応・難病申請を担う、二人三脚の体制が望ましい形です。
専門施設は通院間隔が 3〜6 ヶ月に 1 回となることが多く、その間の体調変化・感染症・他疾患の併発などに対しては、地域のかかりつけ医がすぐに対応できる体制が安心です。
家族に同じ病気の人がいない場合、遺伝の心配は?
多くの神経難病は孤発性(遺伝性ではない)が大半です。たとえば ALS の約 90% は孤発性で、家族歴がない方がほとんどです。
ただし一部の疾患(家族性 ALS など)は遺伝が関係します。気になる場合は、専門施設で遺伝カウンセリング・遺伝子検査を受けることが可能です。「遺伝するから子どもに」という形で必ず発症するわけではなく、複雑な機序があるため、自己判断せず専門家への相談をおすすめします。
受診時にどんな準備をすれば良いですか?
これまでの経過を整理したメモと、ご家族の同伴があると、診療がスムーズに進みます。
- 症状の始まった時期・進行のしかた(急に/徐々に、左右差、日内変動の有無)
- これまでに服用した薬・服用中の薬(おくすり手帳をお持ちください)
- 他院での検査結果(MRI 画像 CD・採血結果のコピーがあれば)
- 家族歴(両親・兄弟姉妹の神経疾患・自己免疫疾患)
- 困っていること・不安なこと(気軽にお聞かせください)