治せるもの忘れ (正常圧水頭症・慢性硬膜下血腫・甲状腺機能低下症・ビタミン B12 欠乏症・うつ病性仮性認知症) 治療で認知機能が回復する、見逃したくないもの忘れ

治せるもの忘れのページ冒頭イラスト。「そのもの忘れ、治せるかもしれない」「原因を見つけて治せば、回復が期待できる。」の見出しとともに、治療で元気を取り戻した年配の方がお孫さんと絵本を読んで穏やかに過ごす中心の場面と、頭部MRIで原因を調べる・血液検査で調べる・お薬で治療する3つの場面を描き、見つける・治す・取り戻すで認知機能の回復を目指すことを示している。
⚠ 急に進行するもの忘れ・歩行障害・尿失禁が揃う方はこちら

こんな症状はありませんか?

こうした症状は認知症の進行と思われがちですが、上記のいずれかが目立つ場合は「治せるもの忘れ」を疑って積極的にスクリーニングする価値があります。

代表的な「治せるもの忘れ」6 疾患+その他の治療可能な原因

もの忘れ外来でとくに見逃したくない、治療により認知機能の改善が期待できる 6 疾患と、薬剤・栄養・代謝・てんかんなどのその他の原因をまとめます。

治せるもの忘れに気づく代表的なサインを4つの場面で見くらべたイラスト。歩き方の変化を家族が支える、転んで頭をぶつけた直後に床に座り込む、寒がってひざ掛けにくるまる、急に意欲が落ちて趣味の手仕事に手をつけない、の4場面。

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特発性正常圧水頭症 手術で改善

歩き方の変化ともの忘れ・尿失禁が重なる

特徴は歩行や排尿の異変ともの忘れが揃うこと。手術で改善を期待できる代表的な治せるもの忘れです。

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ご家族から「歩き方がおかしい」と気づかれて受診されることが多いタイプ。3 徴がすべてそろう方は約 12%ですが、1〜2 つでも疑う必要があります。

  • 歩き方は歩幅が狭い・足が上がりにくい・開き気味(小刻み・すり足・開脚)
  • 方向転換のときに特にふらつき、つま先が床にひっかかりやすい
  • 頭部 MRI で脳室拡大頭頂部の脳のすきまの狭さを確認
  • 髄液を抜く検査で歩行・認知が改善すれば、シャント手術の良い適応(脳神経専門病院に紹介)
慢性硬膜下血腫 急に進む/すぐ受診を

頭をぶつけたあと、数週間でぼんやりが進む

リスクは抗血栓薬の服用や飲酒ご家族の聴取で気づかれることが多く、CT や MRI で診断でき、手術で改善を期待できます。

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実は軽くぶつけた程度で本人が忘れていることもあり、ご家族から「急にぼんやりしてきた」と気づかれて受診されることが多いタイプです。

  • 受診のきっかけは転倒・頭部打撲の聴取(数か月以内)
  • 頭部 CT または MRIで当日のうちに診断できる
  • 治療:局所麻酔下の穿頭ドレナージ手術で 70〜90% が改善(脳神経外科に紹介)
  • 術後の再発もあり得るため、定期的なフォローが大切
甲状腺機能低下症

頭が回りにくく、寒がり・脈がゆっくり

もの忘れに加えてむくみ・倦怠感が目立つとき。血液検査だけで診断でき、ホルモン補充で改善を期待できるタイプ。

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頻度の高い病気で、女性は男性の 5〜8 倍、高齢者でも目立ちます。

  • 身体所見:脈が遅い声が低くかすれるむくみ
  • 血液検査の甲状腺ホルモンで確実に拾える
  • 治療:レボチロキシン(甲状腺ホルモン)の補充で改善
ビタミン B12 欠乏症

両手のしびれと、
もの忘れ・ふらつきが一緒に

この病気は血液検査で確実に診断でき、注射や内服で改善を期待できるタイプ。早めに見つければ症状の固定を防げます。

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リスクが上がるのは胃薬糖尿病薬(メトホルミン)長期服用、または胃を切除された方です。

  • 両手のしびれから始まり、足元のふらつき・歩きにくさへ進むことがある
  • 血液検査のビタミン B12 値で確認
  • 治療:メコバラミンの内服または注射で改善
うつ病性仮性認知症

「何もわからない」と即答するもの忘れ

高齢者のうつ病が認知症のように見える病態。急に元気がなくなったもの忘れで、抗うつ薬で改善を期待できるタイプ。

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受診のきっかけは急な発症(数週〜数ヶ月)と、不眠食欲低下興味喪失の併存です。

  • 気分の沈み・意欲低下・睡眠の乱れを伴うのが典型
  • 質問に「分からない」と即答/ヒントで思い出せる
  • うつ病スクリーニング問診票(GDS-15/PHQ-9)でスクリーニング
  • 治療:抗うつ薬(SSRI など)で改善が見込める
神経梅毒

もの忘れ・歩行障害・けいれんを起こす感染症

これは梅毒が脳に達して起こる病態です。血液検査で疑い、抗生剤で治療できます。

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特徴は治療歴の有無にかかわらず、感染から年単位で脳に達することがある点。近年、国内でも増加傾向にあります。

  • 過去の手足の発疹全身のリンパ節の腫れのエピソードを聴取
  • 急な進行・けいれん・脳梗塞のような症状を伴うときに疑う
  • 治療:ペニシリン Gの 10〜14 日間点滴(連携病院で入院加療)
その他の治せる原因

お薬・お酒・代謝・てんかんが背景にある

これらは原因を取り除けば改善が期待できる病態。お薬手帳と既往歴の見直しが、診断の第一歩です。

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受診のきっかけは急な発症短期間の悪化があるときが多いです。見逃さないように注意が必要なタイプです。

  • 大量飲酒ふらつき眼の動きがおかしい → ビタミン B1 欠乏
  • 意識がぼんやりする波がある → 非けいれん性てんかんの可能性
  • 睡眠薬抗コリン薬オピオイドの長期服用で認知が落ちることがある
  • 血液検査でナトリウムカルシウム肝腎機能の異常が見つかることがある

受診から診断までの流れ

問診と神経学的診察で「治せる原因」のサインを拾い、頭部 MRIスクリーニング血液検査で 6 疾患を順番に確認しながら除外していきます。

受診から診断までの4つの場面を左から右へ並べたイラスト。問診、歩き方の観察(神経学的診察)、頭部MRI検査、スクリーニング血液検査(採血)の順に、同じご本人と医師が進んでいく。
  1. 問診 次の項目を詳しく確認します:
    • 発症のしかた(急に or ゆっくりか)と進行スピード
    • 随伴症状:歩行障害・尿失禁・寒がり・両手しびれ・抑うつ
    • 頭部外傷の既往(数か月以内の転倒)
    • 服薬歴:胃薬・糖尿病薬・抗血栓薬・睡眠薬
    • 飲酒歴・栄養状態
  2. 神経学的診察院内で実施 次の項目を診察します:
    • 歩き方や動きの観察(小刻み・開脚・すり足・すくみ足、パーキンソン症状の有無)
    • 片側の手足で力やしびれの異常(慢性硬膜下血腫などのサイン)
    • 感覚の確認(足元の位置感覚/ビタミン B12 欠乏のサイン)
  3. 認知機能評価院内で実施 症状に合わせて、次の評価を組み合わせます:
    • もの忘れの基本検査で全般評価
    • うつ症状の疑いがあればうつのスクリーニング問診を併用
  4. 頭部 MRI院内で当日実施可 慢性硬膜下血腫/正常圧水頭症/梗塞・出血/腫瘍の除外を確認します。
  5. スクリーニング血液検査院内で当日実施 甲状腺ホルモン・ビタミン・葉酸・電解質・肝腎機能・血糖など。もの忘れ外来の標準項目として全例で実施します。
  6. 必要時の追加検査と専門連携外来〜紹介 疑い別に追加検査と連携先を判断します:
    • 正常圧水頭症の疑い:髄液を抜く検査(脳神経専門病院で実施)
    • 非けいれん性てんかん疑い:脳波検査
    • 頭部外傷後の段階的進行:慢性硬膜下血腫の評価
    • うつ併存:精神科連携

治療の組み立て

6 疾患それぞれに具体的かつ確立された治療法があります。共通するキーワードは「早期に診断するほど改善が大きい」。長期間放置されると、可逆性であった症状も固定化していきます。

治療を経て日常を取り戻したご本人のイラスト。初老〜高齢のご本人がしっかりした足取りで散歩や庭の手入れなどを穏やかに楽しみ、傍らで家族が寄り添って見守っている。治療で歩行や認知機能が回復した前向きな場面。

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手術

手術で改善が期待できる 2 つの病気

対象となるのは正常圧水頭症慢性硬膜下血腫早期発見・早期治療が大切な代表的な治せるもの忘れです。

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治療は、正常圧水頭症は髄液をお腹側に逃すシャント手術慢性硬膜下血腫は局所麻酔で 30〜60 分ほどの穿頭ドレナージで対応します。どちらも脳神経外科の専門病院で実施します。

  • 正常圧水頭症:手術で歩行が 6〜8 割もの忘れが 3〜6 割で改善
  • 慢性硬膜下血腫:手術で7〜9 割が認知・歩行とも改善
  • 慢性硬膜下血腫は術後の再発もあり得るため、定期的なフォローが大切
補充療法

不足を補うだけで、もの忘れが改善することがある

原因は甲状腺ホルモンやビタミン B12 の不足早期発見・早期治療が大切です。

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どちらも血液検査で診断がついたら、外来で内服または注射での補充を始められます。改善には数週〜数か月かかることが多いです。

  • 補充は長期に続けることが多く、自己中断せずに、定期的な血液検査でのフォローが必要
抗うつ薬と環境調整

お薬と生活の調整で、気分ともの忘れを一緒に治す

これは高齢者のうつ病が認知症のように見える病態。治療を始めると、気分の改善とともにもの忘れもよくなることがあります。

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薬剤と、休養生活リズム運動の支援を組み合わせます。

  • SSRI/SNRIを少量から増やしていく
  • 抑うつと認知の両方に効果が出るまで数週〜数か月かかる
  • 一定期間後にもの忘れと気分の両方を再評価して継続を判断
見直しと是正

お薬・栄養・体調を見直して、原因から治す

これは隠れた原因を取り除くタイプの治療。お薬手帳と既往歴の確認が、診断と治療のいちばんの手がかりになります。

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原因は人によってさまざまで、大量飲酒栄養・電解質の異常が背景にあることもあります。考えられるものを1 つずつ確認し、是正していきます。

  • 睡眠薬(古いタイプ)は段階的に減量・中止を検討
  • もの忘れを悪化させやすい薬(過活動膀胱の薬・古いタイプの抗アレルギー薬など)の見直し
  • ビタミン B1 欠乏が疑われたらビタミン B1 を補充
  • 意識が波打つ・けいれんがあるときは、てんかんの精査・治療へ

スクリーニング血液検査セットもの忘れ外来の標準項目

「治せるもの忘れ」を見逃さないために、当院のもの忘れ外来では全例にこれらの標準項目を実施しています。原因が拾えれば外来内で治療開始または専門連携に直結します。

こんな症状はすぐ受診を

治せる原因が疑われるサイン — 早期受診で改善幅が変わります

あなたのもの忘れの緊急度をご確認ください

緊急

すぐに救急受診

  • 意識がもうろうとして戻らない(脳卒中/てんかん発作/代謝性脳症)
  • 突然の頭痛+意識変容(くも膜下出血の可能性)
  • 急な片麻痺・呂律不良を伴う認知低下
119に電話する
注意

数日以内に受診

  • 数週〜数か月で急に進むもの忘れ(慢性硬膜下血腫/甲状腺)
  • 転倒既往+認知障害(慢性硬膜下血腫を最優先除外)
  • 歩行障害+尿失禁+認知低下(正常圧水頭症の疑い)
0942-42-1155 に電話
相談

予約して受診

  • 緩徐進行のもの忘れ+寒がり・体重増加(甲状腺)
  • 両手のしびれ+ふらつき+もの忘れ(B12 欠乏)
  • 抑うつ+もの忘れ(仮性認知症)
WEB予約・アクセス

よくある質問

「治せるもの忘れ」とはどういう意味ですか?
原因疾患を治療することで、認知機能が改善(一部または全部)する病態の総称です。
  • 正常圧水頭症/慢性硬膜下血腫/甲状腺機能低下症/ビタミン B12 欠乏/うつ病性仮性認知症が代表
  • もの忘れ外来受診者の9〜13%でこれらの原因が見つかる
  • 早期発見・治療ほど改善幅が大きい(長期放置で固定化)
アルツハイマー型認知症と「治せるもの忘れ」はどう見分けますか?
経過の速さ・随伴症状・血液検査と画像で総合的に判断します。
  1. ① 経過の速さ アルツハイマー型は通常年単位で緩徐進行し、もの忘れだけが先に目立ちます。正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫は数週〜数か月で進行することが多く、進行のスピードが見分けの大きな手がかりです。
  2. ② 随伴症状 アルツハイマー型では歩行障害は末期まで目立ちません。正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫では歩行障害が認知低下と並ぶか先行し、B12 欠乏では両手のしびれ、甲状腺機能低下では寒がり・むくみが伴います。
  3. ③ 血液検査と画像 甲状腺・B12 は血液検査、慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症は頭部 MRIで確実に拾えます。当院の標準的な血液検査と頭部 MRI を組み合わせれば、外来で多くは絞り込めます。
家族のもの忘れが急に進んできた/頭をぶつけたことが気になります。
慢性硬膜下血腫の可能性があり、早めの頭部 CT/MRI を強く推奨します。
  1. ① まず CT または MRI を受ける 軽くぶつけた程度でも、数週〜数ヶ月かけてじわじわ発症することがあります。当院では頭部 CT または MRIを当日実施でき、診断は外来で完結することがほとんどです。
  2. ② リスクが高い方 リスクが上がるのは抗血栓薬を飲んでいる方大量飲酒の方高齢男性です。本人が打撲を覚えていなくても、ご家族から「急にぼんやりしてきた」のサインがあれば疑う価値があります。
  3. ③ 診断後の流れ 画像で硬膜下血腫が確認されたら、脳神経外科の専門病院へ紹介します。診断が早ければ穿頭ドレナージ手術で70〜90%が改善します。
血液検査だけで原因が分かることがありますか?
甲状腺機能低下症・ビタミン B12 欠乏・電解質異常などは血液検査で確実に拾えます。
  • 当院ではもの忘れ外来の標準項目として、甲状腺ホルモン・ビタミン B12・葉酸・血糖・肝腎機能を全例で測定
  • 原因が拾えれば内服(レボチロキシン・メコバラミン)で外来治療開始
  • 並行して頭部 MRI で慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症を除外する組み合わせが基本
うつ病と認知症はどう関係していますか?
高齢者うつ病が認知機能低下として現れる「仮性認知症」と、本物の認知症の併存があり、両方を考慮して評価します。
  1. ① 仮性認知症(うつ病が認知症のように見える) うつ病の影響でもの忘れが目立つ状態です。高齢者でも使いやすい抗うつ薬などの抗うつ療法で、認知機能が大幅に改善することがあります。
  2. ② うつ病と認知症の併存 抑うつはアルツハイマー型・レビー小体型認知症の前駆症状として出ることもあります。両方を念頭に置きながら評価します。
  3. ③ 評価の組み合わせと再評価 抗うつ療法を一定期間続けたのちに、もの忘れと気分の両方を再評価します。改善があれば仮性認知症、改善が乏しければ軽度認知障害(MCI)認知症の併存を考えていきます。
何科を受診すればよいですか?
脳神経外科・脳神経内科のもの忘れ外来が初診の窓口として最適です。
  • 当院では院内 MRI と血液検査で 6 疾患を一通りスクリーニング
  • 正常圧水頭症の疑いは脳神経専門病院でタップテスト(髄液を抜く検査)/シャント術へ連携
  • 慢性硬膜下血腫の疑いは脳神経専門病院で穿頭ドレナージへ連携
  • うつ病性仮性認知症で重症は精神科へ連携

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つつみ脳神経外科クリニック
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