この記事の結論
久山町の調査では、軽度認知障害(MCI)と診断された方の31%が、5年後に正常な認知機能へ戻っていました。75歳未満では半数を超えます。戻ったあとにまた下がる方もいるので、半年〜1年ごとに同じ検査で見ておくことが大切です。
根拠にした研究BMC Geriatrics 2025/久山町研究——軽度認知障害と診断された380人を、5年後まで追いかけた調査です1。
こんな方に読んでいただきたい記事です
福岡県久山町では、65歳以上の住民のほぼ全員を対象にした認知症の調査が1985年から繰り返されています(この町の37年分のデータは認知症になる人は減ってきている?で紹介しました)。
この調査から「軽度認知障害(MCI)と診断された人が、その後どうなったか」を追いかけた研究が発表されました1。日本の地域で暮らす高齢者を、実際に5年・10年と追いかけた数字です。
軽度認知障害と診断された380人を、5年後まで追いかけた記録です。
調査を受けた時点の年齢で分けると、差ははっきりしています。
| 年齢(調査時) | 正常に戻った | 認知症に進んだ |
|---|---|---|
| 75歳未満(123人) | 51% | 15% |
| 75歳以上(257人) | 22% | 34% |
75歳未満では半数を超える方が正常に戻っていました。一方、75歳以上では5人に1人ほどです。
380人分をまとめると、次のようになります。
実際の割合(正常31%・軽度認知障害のまま27%・認知症28%・死亡14%)を、10人あたりに直した目安です。
戻る人と、進む人が、ほぼ同じくらいいます。「軽度認知障害=認知症の予備軍」という一方向のイメージとは、実際の数字はかなり違います。
「380人」の内訳
2012〜2013年と2017〜2018年の調査で軽度認知障害と診断され、5年後の状況(受診の記録、またはご存命かどうか)まで確認できた方の合計です。
当院のMCIのページに載せている「38%」との違い
当院の軽度認知障害(MCI)のページでは、米国メイヨー・クリニックの地域研究をもとに「38%が正常に戻る」という数字を紹介しています2。今回の数字と食い違って見えますが、別々の集団を、別々の期間、別のやり方で追いかけた数字です。どちらかが誤りということではありません。日本にお住まいで、いまの年齢が分かっている方には、久山町の年齢別の数字のほうが近いと考えてください。
この記事の数字についている幅(信頼区間)について
本文では読みやすさのため割合だけを載せましたが、実際の論文にはそれぞれ幅がついています(たとえば31%は27〜36%)。人数が少ないほど、この幅は広くなります。幅が広い数字は、まだ値が定まっていないというサインです。
この研究の限界
この研究で「正常に戻りやすかった」方の特徴から、いまの生活で続けられることは3つあります。どれも新しく始めることではなく、いま続けていることをやめないための一手です。
血圧と血糖を、いまのまま続ける
朝、起きて1時間以内に血圧を測って、数字を書き留めてください。1回でも構いません。
細い血管の変化は、年齢とともに誰にでもある程度は現れます。
身のまわりのことを、自分でやり続ける
いま自分でできていることを1つ選んで、これからも自分で続けると決めてください。ご家族は、その1つを手伝わずに見守ってください。
外出や運転を続けるかは、主治医にご相談ください。
同じ検査を、半年〜1年ごとに受ける
前回、認知機能の検査を受けたのはいつでしたか。すぐに思い出せない方は、それが受診の合図です。
「半年〜1年ごと」は当院の目安です(研究の調査間隔は5年)。
これらは「正常に戻った方に多かった特徴」であって、条件ではありません。当てはまらないから戻らない、ということではありません。
血圧と認知症の関係は血圧を下げると認知症は減らせる?で詳しく整理しています。
10年追えた171人のうち、最初の5年で正常に戻った52人を、さらに5年追いかけた結果です。人数がぐっと減るので、幅のある数字として見てください。
| さらに5年後 | 人数(52人中) |
|---|---|
| 正常のままだった | 25人(48%) |
| ふたたび軽度認知障害と判定された | 17人(33%) |
| 認知症に進んだ | 3人(6%) |
このほか、5年の間に亡くなった方が7人(13%)いらっしゃいます。
良い状態が必ず続くわけではありません。52人のうち17人は、5年のうちにふたたび軽度認知障害と判定されました。米国メイヨー・クリニックの地域研究でも、同じ傾向が出ています。正常に戻った方は、一度も軽度認知障害になったことのない方より、ふたたび軽度認知障害や認知症になりやすいという結果でした2。
2012〜2013年に軽度認知障害と診断された171人を、10年追いかけた結果です。5年後には31%だった「正常」が、10年後には18%になります。
| 10年後の状態 | 割合(171人中) |
|---|---|
| 正常な認知機能に戻った | 18% |
| 軽度認知障害のまま | 15% |
| 認知症に進んだ | 25% |
このほか、10年の間に亡くなった方が42%いらっしゃいます。もともと年齢の高い方が多い集団です。
正常に戻っても、それで終わりではありません。ここでいう「正常に戻った」は、検査の点数が、心配のいらないところまで戻ったという意味です。脳そのものが元どおりになったかどうかまでは、この研究では調べていません。
だからこそ、戻ったあとも半年〜1年ごとに見ておく意味があります。 良い時期のうちに次の受診を決めておくのが、いちばん現実的です。
ご本人おひとりでも、ご家族とご一緒でも構いません。
薬の影響や甲状腺の状態など、治せる原因が見つかることがあります。
早い段階のほうが、調べられることや対応の幅が広いこともあります。詳しくは軽度認知障害(MCI)のページをご覧ください。
これらがあれば、初回の診察が進めやすくなります。
もの忘れなどの認知機能の低下が検査で確かめられるものの、身のまわりのことはご自身でできている状態を指します(買い物やお金の管理など、手間のかかることに時間がかかるようになることはあります)。認知症は「認知機能の低下によって、生活に支障が出ている」状態なので、ここが分かれ目です。
分類や検査の詳しい話は軽度認知障害(MCI)のページにまとめています。
問診・認知機能の検査・頭部MRIまで含めて、60〜90分ほどをみておいてください。これらは初診の当日に一通り行いますので、別の日に出直していただく必要はありません。
ご予約なしでも受診いただけます(お電話やWEBからのご予約もできます)。初診の当日に、診断と今後の方針までお伝えできることが多いですが、検査の内容によっては結果のご説明が後日になることがあります。
保険診療の範囲内です。実際にお支払いいただく金額は、加入されている保険や年齢によって変わります。気になる場合は 0942-42-1155 までお問い合わせください。
使えます。結果の用紙や画像のディスクをお持ちください。同じ検査を続けて比べられるほうが、変化の向きが分かりやすくなります。
検査の点数が心配のいらないところまで戻った、という意味です。戻ったあとも定期的に見ていくことをおすすめします。
75歳以上でも5年で22%の方が正常に戻っていました。75歳未満(51%)より低いのは事実ですが、ゼロではありません。
もの忘れのご相談を承っています。
ご予約なしでも受診いただけます。ご予約・ご質問は 0942-42-1155 へどうぞ。
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