天気が崩れると頭痛がするのは本当?33万件の頭痛記録が示した、天気痛の正体と今日からの備え
コラムテーマ:予防・生活指導
この記事の結論
本当です。日本の33万件を超える頭痛記録の分析で、気圧の低下・高い湿度・雨の日と、頭痛の起こりやすさとの関連が確認されています。天気は変えられなくても、予報を見て先回りする備えはできます。
根拠にした研究Headache 2023/日本の頭痛日記アプリの研究——4,375人の33万件を超える頭痛記録を、気象データと突き合わせた分析です2。
こんな方に読んでいただきたい記事です
- 雨や台風が近づくと、頭痛がひどくなる気がする
- 「天気のせいなんて気のせいでしょ」と言われて、もやもやしている
- 天気は変えられないから仕方ない、とあきらめている
「明日は天気が下り坂か……また頭痛が来るかもしれない」。外来でも、雨の前や台風の季節になると、こうしたご相談が増えます。
この現象は、昔から「天気痛(てんきつう)」「気象病(きしょうびょう)」と呼ばれてきました。この記事では、日本発のビッグデータ研究をもとに、天気と頭痛の関係と、今日からできる備えをご紹介します。
FINDINGS本当ですデータが示す「天気と頭痛」の関係
世界31の研究をまとめた分析では、片頭痛のある人の半数近くが「天気の変化」を発作の引き金として報告していました1。
片頭痛に限らず、頭痛全般ではどうでしょうか。日本では、頭痛日記アプリの33万件を超える記録(4,375人分)と気象データを突き合わせた研究があります2。頭痛の発生と関連していた天気の条件は次のとおりです。
| 天気の条件 | 内容 |
| 気圧が低い | 頭痛の記録が増えていました。(低気圧が続いている時間帯) |
| 気圧が下がり始める | 頭痛の6時間ほど前から関連が見られました。(「雨が降り出す前から痛い」という感覚と一致します) |
| 湿度が高い・雨 | 頭痛の記録が増えていました。(じめじめした日・雨の日) |
さらにこの研究では、気象データを人工知能(AI)に学習させました。すると、集団全体で見た「1時間ごとの頭痛の起こりやすさ」の浮き沈みの半分ほど(54%)を説明できました2。
「天気と頭痛はつながっている」ことを、ビッグデータが裏づけた形です。
もう少し詳しく知りたい方へ(読み飛ばして構いません)
- 天気の影響の大きさは、人によってかなり違います
- 片頭痛の研究のまとめでは、天気の条件から痛みを予測できる度合いは2割ほどにとどまります3。
- 天気は引き金のひとつではあっても、単独で発作を決めるわけではありません。
- 効果の大きさ自体は小さめでした
- 片頭痛の31研究のまとめでも、気温や気圧と発作の関連は統計的に確かでしたが、起こりやすさは1.1倍前後=「わずかに増える」程度でした(気温でオッズ比1.15、気圧でオッズ比1.07)1。
- 「天気が崩れれば必ず痛くなる」わけではありません。
- 「天気が原因だ」との断定はできません
- 天気を人工的に操作する試験はできないため、言えるのは「関連がある」ことまでです3。
TODAY今日からできること天気は変えられなくても、備えは変えられる
自分のパターンを知る
- 頭痛が起きた日と、その日の天気を、カレンダーやスマホにメモします。気圧予報が見られるアプリを使うと簡単です。
- 2〜4週間つけると、自分が気圧低下で痛むタイプかどうかが見えてきます。
予報が悪い日は、ほかの引き金を減らす
- 睡眠不足食事抜き飲酒長時間の画面作業などは、自分で変えられます。
- 発作は引き金の「重なり」で起こりやすくなるためです3。
早めの対処を医師と決めておく
- 発作が起きたときの薬と飲むタイミングを、医師と相談して決めておきます3。
- 市販薬だけでしのいでいる方は、その相談から受診いただいて構いません。
発作が多い月が続くなら、予防を相談する
- 天気のたびに寝込んでしまう状態が続くなら、発作を起こりにくくする予防治療という選択肢があります。
MECHANISMなぜ天気で頭痛が起こるのか
仕組みは、まだ完全には分かっていません。いま有力とされる手がかりは次の4つです3。
耳の奥が、気圧を感じ取っている
- 内耳(ないじ)は、体の傾きや揺れを感じ取る器官です。
- 動物実験では、ふだんの天気の変化と同じくらい気圧を下げただけで、内耳の神経が反応しました5。
痛みの神経に伝わる
- 気圧を下げると、頭の痛みを伝える「三叉(さんさ)神経」の中継点も活発になります6。
片頭痛の予防薬とつながっている
- 片頭痛の痛みは、三叉神経からCGRP(シージーアールピー)という物質が出て起こります7。
- いま使われている予防薬(飲む予防薬・予防の注射)は、このCGRPを抑える薬です。
天気とCGRPを直接調べた研究は、まだありません3。
痛くなる前は、敏感になっている
- 片頭痛では、痛み出す前にあくび・眠気・肩こりのようなサイン(予兆=よちょう)が出る人がいます。
- この時期は感覚が敏感になり、天気の変化も感じ取りやすくなります。
GUIDE受診の目安
こんなときは一度ご相談ください
- 頭痛が月に2回以上ある(生活に支障が出る頭痛なら月に3日以上)
- 市販の鎮痛薬を飲む日が増えている
- 月に10日以上が続くなら要注意です。
- 飲みすぎ自体が頭痛を増やす「薬の使いすぎによる頭痛」につながることがあります(目安の日数は薬の種類によっても異なります)。
- 頭痛で仕事・家事・学校を休むことがある
次のような頭痛は、ためらわず救急車(119番)を
- これまで経験したことのない、突然の激しい頭痛
- 手足の麻痺(まひ)・ろれつの異常を伴う頭痛
FAQよくある質問
Q. 「天気痛」は病院で相談してよいのですか?
はい。天気との関係がよく調べられているのは片頭痛と緊張型頭痛で、どちらにも合った治療があります。「天気のせいだから仕方ない」と我慢する必要はありません。
Q. 気圧予報アプリで発作を完全に予測できますか?
完全には予測できません。研究のAI予測も、集団全体の傾向を説明するもので、一人ひとりの発作を言い当てるものではありません2。
予報は「備えるための参考情報」として使い、体調やほかの引き金もあわせて見るのが現実的です。
Q. 天気の影響を受けやすいのは、どんな人ですか?
まだはっきりとは分かっていません。ただ日本の調査(慢性の片頭痛・緊張型頭痛のある20〜49歳・約670人)では、低気圧で頭痛が出やすいと答えた人は女性でおよそ3倍多いと報告されています(オッズ比2.92)4。
当てはまる方こそ、「今日からできること」の備えが役立ちます。
OUR CLINIC受診のご案内
つつみ脳神経外科クリニックでは、頭痛の診療を行っています。雨の日のたびにつらい思いをしている方は、我慢を続ける前に一度ご相談ください。
受診したらどう進むか
- 頭痛のタイプを確認します(問診と診察。必要に応じてMRIで、ほかの病気が隠れていないかも調べます)
- 薬の使い方を一緒に見直します(発作が起きたときの薬と、飲むタイミング)
- 発作が多ければ、予防治療を検討します
受診のときに持ってきていただくもの
- 頭痛が起きた日と天気のメモ(アプリの画面でも構いません)
- お薬手帳