片頭痛の予防注射、2年続けるとどうなる?1000人超を追った実際の診療のデータ

コラム

診察室で医師がペン型の注射デバイスを手に、患者の女性と2冊の卓上カレンダーを見ながら片頭痛の予防注射の経過を確認している様子と、カレンダー・こめかみに手を当てる女性・公園を歩く女性の円形カット3枚を並べた、片頭痛の予防注射を2年続けたデータをあつかうコラムのヒーローイラスト

この記事の結論

2年間続けられた方では、効果は持続しました。時間がたつほど効かなくなる、という結果ではありませんでした。

こんな方に読んでいただきたい記事です

  • 片頭痛の予防注射をすすめられたが、続けて効果があるのか知りたい
  • すでに予防注射を続けていて、「そのうち効かなくなるのでは」と不安がある
  • 飲み薬の予防薬を試したが効きが足りず、次の手を探している

片頭痛の予防注射が日本で使えるようになって、数年がたちました。外来でよくいただくのが「始めたら、ずっと効き続けるのですか」という質問です。

2025年末に、「2年間使い続けた人はどうだったのか」を大人数で追いかけた研究が、頭痛の専門誌に報告されました。海外の123の医療機関で、予防注射を始めた1000人を超える方を最長24か月間追いかけた研究です1

予防注射にはいくつか種類があります。今回のデータは、そのうちの1つ(フレマネズマブ、商品名アジョビ)についてのものです。

ABOUT THE INJECTION予防の注射とは発作を起こりにくくすることをねらう薬です

片頭痛の発作に関わっていると考えられている成分(CGRPと言います)があり、その成分のはたらきをブロックして、発作を起こりにくくすることをねらう薬です。痛くなってから効かせる薬ではありません2

打ち方は2通りから選べます2

打ち方1回に打つ本数自宅での自己注射
4週間に1回1本条件を満たせば可能
12週間に1回3本できません(医療機関で打ちます)

どのくらい効くのか

日本を含む試験で、有効成分の入っていない注射(プラセボ)と比べても、片頭痛の日数が減ることが確かめられています34

Q. プラセボと比べて、どのくらいの差がありましたか。

日本と韓国で行われた2つの試験です。頭痛が月6〜14日あった方357人と、慢性片頭痛の方571人が参加し、いずれも12週間(3か月)をみています34

対象と見たもの予防注射プラセボ
頭痛が月6〜14日あった方
片頭痛の日数3
月4.0日減った月1.0日減った
同じ方で、日数が半分以下に減った方341〜45%11%
慢性片頭痛の方
中等度以上の頭痛の日数4
月4.1日減った月2.4日減った
同じ方で、日数が半分以下に減った方429%13%

プラセボでも数字が動いているのは、頭痛が自然に落ち着く時期や、治療への期待の影響が含まれるためです。注射そのものの効果は、この差の分と考えられます。

この数字は3か月の試験のもので、次の節の2年間の数字とは比べられません。

FINDINGS2年間でわかったこと2年後も効果は続いていました

WHO IS IT FORこの注射を考えるとき対象となる4つの条件

日本では、次の4つすべてに当てはまる方が対象とされています2

条件内容
① 診断片頭痛で発作がひと月に複数回ある、または慢性片頭痛と診断されている
② 回数始める前の3か月以上にわたって、片頭痛の日が1か月あたり平均4日以上ある
③ 他の手段睡眠・食生活・体重・ストレスへの対処など薬以外の工夫と、発作時の治療をすでに行っても日常生活に支障が出ている
④ 飲み薬の
予防薬
国内で承認されている飲み薬の予防薬が、効果が足りない・体に合わない・安全性の心配が大きいといった理由で使えない、または続けられない

④の飲み薬には、プロプラノロール、バルプロ酸、ロメリジンなどがあります2。つまり、いきなり注射から始める薬ではありません。原則として、まず飲み薬の予防薬を検討します(安全性の理由で使えない場合を除きます)。

条件に当てはまるかどうかの判断や、まだ予防治療をしていない方の飲み薬の選び方も含めて、ご相談ください。

GUIDEご相談の流れと受診の目安こんなときは一度ご相談ください

当院では、次のような場合に一度ご相談いただくことをおすすめしています。

ご相談いただいた場合は、次の順で進めます。

  1. 頭痛のタイプの確認(典型的な片頭痛では画像検査が不要なこともあります)
  2. いまの治療の見直し
  3. 予防治療の適応の判断

受診の際に、頭痛のあった日数と、使った痛み止めの日数をメモしてお持ちいただけると、初回から具体的にご相談いただけます。

つつみ脳神経外科クリニックでは、頭痛のタイプの確認から、飲み薬による予防治療、予防注射の導入まで対応しています。適応があるかどうかの判断も含めて、まずはご相談ください。

お電話でのご予約0942-42-1155 WEB予約はこちらEPARK(24時間受付)

CAUTION副作用と、気をつけたいサイン多いもの・重いもの・アレルギー反応

多いもの 薬との関連が疑われた副作用で多かったのは、注射した場所の反応でした1

副作用割合
注射した場所の赤み7.0%
注射した場所のかゆみ4.0%
注射した場所の腫れ3.0%
便秘2.8%

注射した場所の「痛み」は、今回の研究のこの表には挙がっていません。ただし国内の添付文書では21.9%と、もっとも多い副作用として記載されています2

多くはないが重いもの 薬との関連が疑われた重い症状は、1083人中8人(0.7%)で報告されています。いずれもご本人の持病や併用薬など、ほかに原因となりうる事情があった方で、薬が原因と確定したわけではありません1

報告された症状の内訳(読み飛ばして構いません)

事象名として報告されたのは、片頭痛、心筋梗塞、小脳の梗塞、脊髄のくも膜下出血、胃の粘膜の傷害、便秘でした1。いずれも薬が原因と確定したものではありません。

アレルギーが出たとき 頻度は分かっていませんが、全身に強いアレルギー反応(アナフィラキシー)や、からだの一部が急に腫れること、じんましんが起こることが知られています2

DETAILS2年間の数字をくわしく片頭痛の日数と、日数以外の変化

この2年間のデータは、治験ではなく実際の外来で使われたときの記録です。ドイツ・オーストリアの123の医療機関で、予防注射を始めた片頭痛の方を最長24か月追いかけたものです。解析の対象は1016人(女性89%、平均46歳)。頭痛のある日が月15日未満の方が55%、月15日以上の方(慢性片頭痛)が45%でした1

片頭痛の日数

対象始める前半年で
半分以下に
減った方
24か月後の
減り方
全体月12日53%−7.5日
頭痛のある日が
月15日未満の方
月9日57%−6.1日
慢性片頭痛の方月16日48%−9.6日

減り方は時間とともに小さくなるどころか、打ち始めて1か月の時点ですでに表れ、その後さらに大きくなっていました1

とくに慢性片頭痛の方にとって、この変化の意味は小さくありません。

日数以外の変化

項目始める前24か月後の
減り方
痛み止めを使う日(全体)月9日−6日
痛み止めを使う日(慢性片頭痛の方)月11日−7日
いちばん強いときの痛み(0〜10の自己評価)7.5−1.9
残った発作の長さ9.4時間−2.3時間

痛み止めを使う日が月6日分減ったということは、ひと月のうち6日、薬に頼らずに過ごせる日が増えていたということです。これにはもうひとつ意味があります。痛み止めの使いすぎは、それ自体が頭痛を増やす原因になるからです1

もう少し詳しく知りたい方へ(読み飛ばして構いません)

① この数字は「2年続けられた方」のものです

2年間の観察を最後まで完了できたのは51%でした。連絡が取れなくなった、体調の変化(副作用が疑われるものを含みます)、効果が足りない、他の治療への変更などが理由です1。上の表の「始める前」は参加者全員の、「24か月後の減り方」は続けられた方の数字なので、引き算はできません(痛みの強さと発作の長さは、とくに少人数の集計です)。

② 注射をしなかった人と比べた研究ではありません

参加者は全員が同じ注射を受けており、受けていない人と比べていません。良くなったことのすべてが薬のおかげ、とは言い切れません1

③ この研究の条件(お金・参加者・国)

お金 この薬を販売する会社が資金を出しており、著者のひとりは同社の社員です1

参加者 参加前の10年間に、98%が何らかの予防治療を受けていました(17%は同じしくみの別の注射)。はじめて予防治療を受ける方の成績ではありません1

 この2年間の研究はドイツ・オーストリアでのものです。日本の患者さんが含まれるのは上の「どのくらい効くのか」の試験で、日本人が15か月を超えて使ったときのデータは国内資料(2023年12月時点)では示されていません2。使ってはいけない、という意味ではありません。

とくに、この数字が「2年続けられた方」のものである点は大切です。効果を感じた方ほど続けやすいため、2年後の数字は実際よりよく見えている可能性があります。また今回の研究では、痛み止めの使いすぎによる頭痛そのものは調べられていません1。そのうえでこのデータは、「始めても、そのうち効かなくなるのでは」という不安に対するひとつの答えになります。

FAQよくある質問

Q. 効いているかどうかは、いつわかりますか。

4週間に1回なら開始から3か月、12週間に1回なら3〜6か月が目安です2。4週間に1回の場合、1回打って変わらなくても、そこでは判断しません(12週間に1回は、1回が3か月分にあたります)。

Q. 一生続けることになりますか。

今回の研究でわかっているのは2年間までです。頭痛が減って日常生活に支障がなくなった段階で、中止を検討します2。ご自身の判断で間隔を空けたり中止したりしないでください。

Q. いまの予防薬は続けるのですか。

併用するか切り替えるかは、頭痛の回数や副作用を見ながら診察時にご相談します。

Q. 自分で注射できますか。

4週間に1回の打ち方で、自己注射専用の器具を使う場合に限りできます2。最初は医療機関で医師のもとで行い、練習してからになります。

Q. 注射は痛いですか。

痛みは多く報告されている副作用です(「副作用」の項をご覧ください)。打つ場所はおなか・太もも・二の腕から選べます2。冷蔵庫から出して30分程度、室温に戻してから使います2。心配な方は診察時にお伝えください。

Q. 効果が半分以下にならなかったら、失敗ですか。

そうとは限りません。発作の強さや長さ、痛み止めの量が減ることも大切な効果です。効果が足りないときは、別の予防薬へ切り替える選択肢もあります。

Q. 妊娠・授乳を考えていますが使えますか。

妊娠中は、治療の必要性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使う薬です2。この種の抗体は胎盤を通過することが知られています2。授乳中の使用も、必要性と母乳の利点を見て一緒に判断します2。妊娠を希望される方は、計画の段階でお申し出ください。

頭痛の回数や生活への支障は、ご自身では「これくらい普通」と思っていても、治療で変えられることが少なくありません。気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。

WARNING SIGNSすぐに受診が必要な頭痛のサイン

次の頭痛は、片頭痛とは別の病気のサインであることがあります。

以下にあてはまるときは、すぐに医療機関を受診してください

以前に同じような症状で診断を受けている方も、いつもと違う・強い・長引くときは、同様にすぐ受診してください。

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