この記事の結論
2年間続けられた方では、効果は持続しました。時間がたつほど効かなくなる、という結果ではありませんでした。
こんな方に読んでいただきたい記事です
片頭痛の予防注射が日本で使えるようになって、数年がたちました。外来でよくいただくのが「始めたら、ずっと効き続けるのですか」という質問です。
2025年末に、「2年間使い続けた人はどうだったのか」を大人数で追いかけた研究が、頭痛の専門誌に報告されました。海外の123の医療機関で、予防注射を始めた1000人を超える方を最長24か月間追いかけた研究です1。
予防注射にはいくつか種類があります。今回のデータは、そのうちの1つ(フレマネズマブ、商品名アジョビ)についてのものです。
片頭痛の発作に関わっていると考えられている成分(CGRPと言います)があり、その成分のはたらきをブロックして、発作を起こりにくくすることをねらう薬です。痛くなってから効かせる薬ではありません2。
打ち方は2通りから選べます2。
| 打ち方 | 1回に打つ本数 | 自宅での自己注射 |
|---|---|---|
| 4週間に1回 | 1本 | 条件を満たせば可能 |
| 12週間に1回 | 3本 | できません(医療機関で打ちます) |
日本を含む試験で、有効成分の入っていない注射(プラセボ)と比べても、片頭痛の日数が減ることが確かめられています34。
日本と韓国で行われた2つの試験です。頭痛が月6〜14日あった方357人と、慢性片頭痛の方571人が参加し、いずれも12週間(3か月)をみています34。
| 対象と見たもの | 予防注射 | プラセボ |
|---|---|---|
| 頭痛が月6〜14日あった方 片頭痛の日数3 | 月4.0日減った | 月1.0日減った |
| 同じ方で、日数が半分以下に減った方3 | 41〜45% | 11% |
| 慢性片頭痛の方 中等度以上の頭痛の日数4 | 月4.1日減った | 月2.4日減った |
| 同じ方で、日数が半分以下に減った方4 | 29% | 13% |
プラセボでも数字が動いているのは、頭痛が自然に落ち着く時期や、治療への期待の影響が含まれるためです。注射そのものの効果は、この差の分と考えられます。
この数字は3か月の試験のもので、次の節の2年間の数字とは比べられません。
日本では、次の4つすべてに当てはまる方が対象とされています2。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| ① 診断 | 片頭痛で発作がひと月に複数回ある、または慢性片頭痛と診断されている |
| ② 回数 | 始める前の3か月以上にわたって、片頭痛の日が1か月あたり平均4日以上ある |
| ③ 他の手段 | 睡眠・食生活・体重・ストレスへの対処など薬以外の工夫と、発作時の治療をすでに行っても日常生活に支障が出ている |
| ④ 飲み薬の 予防薬 | 国内で承認されている飲み薬の予防薬が、効果が足りない・体に合わない・安全性の心配が大きいといった理由で使えない、または続けられない |
④の飲み薬には、プロプラノロール、バルプロ酸、ロメリジンなどがあります2。つまり、いきなり注射から始める薬ではありません。原則として、まず飲み薬の予防薬を検討します(安全性の理由で使えない場合を除きます)。
条件に当てはまるかどうかの判断や、まだ予防治療をしていない方の飲み薬の選び方も含めて、ご相談ください。
当院では、次のような場合に一度ご相談いただくことをおすすめしています。
ご相談いただいた場合は、次の順で進めます。
受診の際に、頭痛のあった日数と、使った痛み止めの日数をメモしてお持ちいただけると、初回から具体的にご相談いただけます。
つつみ脳神経外科クリニックでは、頭痛のタイプの確認から、飲み薬による予防治療、予防注射の導入まで対応しています。適応があるかどうかの判断も含めて、まずはご相談ください。
多いもの 薬との関連が疑われた副作用で多かったのは、注射した場所の反応でした1。
| 副作用 | 割合 |
|---|---|
| 注射した場所の赤み | 7.0% |
| 注射した場所のかゆみ | 4.0% |
| 注射した場所の腫れ | 3.0% |
| 便秘 | 2.8% |
注射した場所の「痛み」は、今回の研究のこの表には挙がっていません。ただし国内の添付文書では21.9%と、もっとも多い副作用として記載されています2。
多くはないが重いもの 薬との関連が疑われた重い症状は、1083人中8人(0.7%)で報告されています。いずれもご本人の持病や併用薬など、ほかに原因となりうる事情があった方で、薬が原因と確定したわけではありません1。
事象名として報告されたのは、片頭痛、心筋梗塞、小脳の梗塞、脊髄のくも膜下出血、胃の粘膜の傷害、便秘でした1。いずれも薬が原因と確定したものではありません。
アレルギーが出たとき 頻度は分かっていませんが、全身に強いアレルギー反応(アナフィラキシー)や、からだの一部が急に腫れること、じんましんが起こることが知られています2。
この2年間のデータは、治験ではなく実際の外来で使われたときの記録です。ドイツ・オーストリアの123の医療機関で、予防注射を始めた片頭痛の方を最長24か月追いかけたものです。解析の対象は1016人(女性89%、平均46歳)。頭痛のある日が月15日未満の方が55%、月15日以上の方(慢性片頭痛)が45%でした1。
| 対象 | 始める前 | 半年で 半分以下に 減った方 | 24か月後の 減り方 |
|---|---|---|---|
| 全体 | 月12日 | 53% | −7.5日 |
| 頭痛のある日が 月15日未満の方 | 月9日 | 57% | −6.1日 |
| 慢性片頭痛の方 | 月16日 | 48% | −9.6日 |
減り方は時間とともに小さくなるどころか、打ち始めて1か月の時点ですでに表れ、その後さらに大きくなっていました1。
とくに慢性片頭痛の方にとって、この変化の意味は小さくありません。
| 項目 | 始める前 | 24か月後の 減り方 |
|---|---|---|
| 痛み止めを使う日(全体) | 月9日 | −6日 |
| 痛み止めを使う日(慢性片頭痛の方) | 月11日 | −7日 |
| いちばん強いときの痛み(0〜10の自己評価) | 7.5 | −1.9 |
| 残った発作の長さ | 9.4時間 | −2.3時間 |
痛み止めを使う日が月6日分減ったということは、ひと月のうち6日、薬に頼らずに過ごせる日が増えていたということです。これにはもうひとつ意味があります。痛み止めの使いすぎは、それ自体が頭痛を増やす原因になるからです1。
① この数字は「2年続けられた方」のものです
2年間の観察を最後まで完了できたのは51%でした。連絡が取れなくなった、体調の変化(副作用が疑われるものを含みます)、効果が足りない、他の治療への変更などが理由です1。上の表の「始める前」は参加者全員の、「24か月後の減り方」は続けられた方の数字なので、引き算はできません(痛みの強さと発作の長さは、とくに少人数の集計です)。
② 注射をしなかった人と比べた研究ではありません
参加者は全員が同じ注射を受けており、受けていない人と比べていません。良くなったことのすべてが薬のおかげ、とは言い切れません1。
③ この研究の条件(お金・参加者・国)
お金 この薬を販売する会社が資金を出しており、著者のひとりは同社の社員です1。
参加者 参加前の10年間に、98%が何らかの予防治療を受けていました(17%は同じしくみの別の注射)。はじめて予防治療を受ける方の成績ではありません1。
国 この2年間の研究はドイツ・オーストリアでのものです。日本の患者さんが含まれるのは上の「どのくらい効くのか」の試験で、日本人が15か月を超えて使ったときのデータは国内資料(2023年12月時点)では示されていません2。使ってはいけない、という意味ではありません。
とくに、この数字が「2年続けられた方」のものである点は大切です。効果を感じた方ほど続けやすいため、2年後の数字は実際よりよく見えている可能性があります。また今回の研究では、痛み止めの使いすぎによる頭痛そのものは調べられていません1。そのうえでこのデータは、「始めても、そのうち効かなくなるのでは」という不安に対するひとつの答えになります。
4週間に1回なら開始から3か月、12週間に1回なら3〜6か月が目安です2。4週間に1回の場合、1回打って変わらなくても、そこでは判断しません(12週間に1回は、1回が3か月分にあたります)。
今回の研究でわかっているのは2年間までです。頭痛が減って日常生活に支障がなくなった段階で、中止を検討します2。ご自身の判断で間隔を空けたり中止したりしないでください。
併用するか切り替えるかは、頭痛の回数や副作用を見ながら診察時にご相談します。
4週間に1回の打ち方で、自己注射専用の器具を使う場合に限りできます2。最初は医療機関で医師のもとで行い、練習してからになります。
そうとは限りません。発作の強さや長さ、痛み止めの量が減ることも大切な効果です。効果が足りないときは、別の予防薬へ切り替える選択肢もあります。
頭痛の回数や生活への支障は、ご自身では「これくらい普通」と思っていても、治療で変えられることが少なくありません。気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
次の頭痛は、片頭痛とは別の病気のサインであることがあります。
以下にあてはまるときは、すぐに医療機関を受診してください
以前に同じような症状で診断を受けている方も、いつもと違う・強い・長引くときは、同様にすぐ受診してください。
| 曜日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日・祝 |
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| 午前 | 9:00 – 12:30 | 休診 | |||||
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