この記事の結論
もの忘れの相談に来て認知機能の低下があった方の67%が、5種類以上の薬を飲んでいました。薬が増えるほど、高齢の方に勧めにくい薬が混じる割合も上がります。お薬手帳を1冊にまとめて持って受診してください。ご自分の判断で薬をやめないでください。
根拠にした研究Alzheimer's & Dementia 2026/スペイン・バルセロナのもの忘れ専門外来を受診した2379人について、飲んでいた薬をまとめて調べた記録です1。
こんな方に読んでほしい記事です
年を重ねるほど薬は増えていきます。持病がひとつ増えるたびに薬が足され、気づけば何種類も飲んでいる——高齢の方には珍しくないことです。
では、もの忘れの相談に来た方ではどうなのか。それを数えた報告が出ました1。受診した方の平均年齢は75.4歳、飲んでいた薬は平均6.3種類でした。
認知機能の低下が確かめられた2103人では、次のようになっていました。
| 飲んでいる薬 | 認知機能の低下がある方(2103人) |
|---|---|
| 5種類以上 | 67% |
| 10種類以上 | 21% |
この割合は、一般の高齢者について報告されている値より大きいのです1。しかも認知機能の低下が重い方ほど、薬の数は多くなっていました。
この研究では、高齢の方には勧めにくい薬(効き目より不利益のほうが大きい、あるいはより安全な代わりがある薬)と、頭の働きに影響しうる薬を数えています。どちらかを1種類以上飲んでいた方の割合は、次のとおりです。
| 薬の数 | 気をつけたい薬が混じっていた割合 |
|---|---|
| 5種類未満 | 39% |
| 5種類以上 | 75% |
| 10種類以上 | 89% |
具体的には、抗コリン作用のある薬(口が渇きやすく、ぼんやりしやすい作用を持つ薬。胃腸・尿の出・アレルギーなどの薬に含まれます)が43%、ベンゾジアゼピン系(睡眠薬・気持ちを落ち着ける薬)が29%の方に処方されていました。
抗コリン作用のある薬は、処方薬だけではありません。ドラッグストアで買える薬にも、この作用を持つ成分が入っているものがあります。市販の睡眠改善薬の成分(眠気を起こすタイプの抗ヒスタミン薬)もその1つです。
図の5つは、いずれも市販薬の例です。処方の睡眠薬(ベンゾジアゼピン系)は、抗コリン作用が強い薬には数えられていません。「眠りや気持ちに働く薬」として、別の項目で数えられています。
ここに名前が挙がる薬=飲んではいけない薬、ではありません。必要があって続いている薬はたくさんあります。
また、腎臓の働きを調べていた方の中では、5種類以上飲んでいた方の21%で腎臓の働きが落ちていました。薬の多くは腎臓から体の外へ出ていくため、同じ量でも効きすぎることがあります。
「気をつけたい薬」の決め方
薬の危険度を、この研究が独自に決めたわけではありません。2つの種類を、それぞれ別のやり方で数えています。
| 種類 | どうやって決めているか |
|---|---|
| 高齢の方には勧めにくい薬 | 4つの判定のどれか1つに当てはまるもの。高齢者向けの国際的な基準(Beers 基準、STOPP/START 基準など)に複数載っている/添付文書に注意が書かれている/スペインの医薬品当局が安全性情報を出している/専門家の話し合いで一致している。 |
| 頭の働きに影響しうる薬 | 薬の働きごとのリストで拾ったもの。眠りや気持ちに働く薬、抗コリン作用のある薬、強い痛み止めなど。 |
薬の情報の集め方
処方の記録に加えて、カルテの自由記載からAI(大規模言語モデル)で薬名を拾い出しています。全体の5%にあたる117件を人の目で確かめ直し、薬の数の食い違いは平均0.21種類でした。
この研究の限界
やることは3つです。どれも今日のうちに終わります。新しく薬を足す話でも、減らす話でもありません。次の診察で薬を見直せる状態にしておくための準備です。
お薬手帳を1冊にまとめる
引き出しやカバンの中のお薬手帳・薬の説明書・薬袋を、1か所に全部集めてください。
市販の薬とサプリも、同じ袋に入れる
いま家にある市販の薬とサプリメントを、作戦1で集めた袋に一緒に入れてください。
眠りの薬・気持ちを落ち着ける薬は、「続けてよいか」を主治医に聞く
次の受診で、「この薬は、いまも続けたほうがよいですか」と聞いてみましょう。
長く飲んでいる薬ほど、やめ方には順番と時間が要ります。減らすかどうかは主治医と一緒に決めてください。
この研究は、ある時点の処方を数えた記録です。薬が多いことがもの忘れの原因なのか、それとも持病の多さや病状の重さが薬の数に表れているだけなのかは、区別できません。1
それでも、薬を見直す価値を示す所見が1つあります。
髄液(背骨の中を流れる液)を少し抜く検査を受けた488人を、アルツハイマー病に特徴的な変化(アミロイドβ)の有無で分けた比較です。年齢や性別などのちがいを差し引いて調べると、薬の数の多さ(5種類以上・10種類以上)そのものは、どちらの群かとは結びついていませんでした。差が出た薬のうち、代表的な2種類を示します。
| 髄液の検査結果 | 抗コリン作用の ある薬 | ベンゾジア ゼピン系 |
|---|---|---|
| アルツハイマー病の変化あり(262人) | 34% | 24% |
| アルツハイマー病の変化なし(226人) | 47% | 33% |
変化が見つからなかった方のほうが、これらの薬を多く飲んでいました。薬の調査は髄液の結果が出る前に行われています。この差について、論文は「元に戻せる可能性のある要因や、アルツハイマー病以外の要因——心の不調や眠りの問題など——が、もの忘れの症状により多く関わっている可能性を示すのかもしれない」と述べています1。薬もその要因の1つと読める、というのがこの記事の見方です。
つまり、もの忘れ=すぐに認知症、ではありません。薬・甲状腺の働き・ビタミン不足・眠り・気分の落ち込みなど、調べれば手が打てる原因が隠れていることがあります。詳しくは治せるもの忘れのページにまとめています。
この比較は髄液検査を受けた方だけの結果です。年齢・性別・教育年数のちがいを差し引いて計算し直すと、なお多かったのは抗コリン作用のある薬のほうでした。
もの忘れが軽い段階(軽度認知障害)と言われたあとの経過を紹介した記事もあります。
1つでも当てはまれば、ご相談ください。ご来院は、ご本人おひとりでも、ご家族とご一緒でも構いません。
なくても受診できます。
いいえ。5種類という数は「見直しを考える目安」であって、多いこと自体が誤りという意味ではありません。持病がいくつもあれば、必要な薬が5種類を超えるのは自然なことです。大切なのは、数を減らすことではなく、全部をひとまとめにして一度見てもらうことです。
自己判断でやめないでください。 長く続けている薬ほど体が慣れているため、急にやめると、眠れなくなる・不安が強くなるだけでなく、薬の種類によってはけいれんの発作や、意識がぼんやりして混乱する状態といった重い症状が起こることがあります。減らすときは主治医の指示で、時間をかけて少しずつ進めます。次の受診で「この薬は、いまも続けたほうがよいですか」と聞くところから始めてください。
はい。もの忘れの診察では、どこから出ている薬かにかかわらず全部を拝見します。ただしご相談なく中止することはありません。お薬手帳をまとめて持ってきていただければ、それだけで見直しの土台ができます。
医師が必要と判断した場合、原則として初診の当日に、問診・認知機能の検査・頭部MRIまで進められます。検査を含めるとお時間をいただきますので、お急ぎのご予定がある日は受付でお申し出ください。ご予約なしでも受診いただけます(お電話やWEBからのご予約もできます)。
保険診療の範囲内です。実際にお支払いいただく金額は、加入されている保険や年齢によって変わります。気になる場合は 0942-42-1155 までお問い合わせください。
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ご予約なしでも受診いただけます。ご予約・ご質問は 0942-42-1155 へどうぞ。
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例:しびれ/もの忘れ/頭が痛い/駐車場