アルツハイマー病の新しい治療(抗アミロイドβ抗体薬)レカネマブ・ドナネマブの対象・しくみ・副作用
病気そのものの説明は → MCI のページ/認知症のページ
WHO誰が対象?
対象は、アルツハイマー病の早い段階(MCI と軽度の認知症)の方だけです2。
この治療の対象アルツハイマー病による・アミロイドβのたまりを確かめた方
認知症の手前
-
MCI(軽度認知障害)
手助けなし
もの忘れはあっても、お金・薬・買い物は、工夫すれば自分でできる
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認知症
-
軽度
手助け少し
以前はできていたお金・薬・買い物などに、人の手助けが要るようになる着替え・食事・トイレは、声かけがあれば自分でできる
- ここからは対象外
-
中等度
手助け中くらい
ひとりでの外出が難しくなり、服選び・着替え・身だしなみに手助けが要る
-
高度(重度とも)
手助け多く
言葉が減り、食事・トイレに多くの介助が要る
- MCI手助けなし
- 軽度手助け少し
- 中等度手助け中くらい
- 高度手助け多く
認知症の手前認知症
対象は、アルツハイマー病による・アミロイドβのたまりを確かめた方
それぞれの段階の目安
- MCI(軽度認知障害)・手助け なし
- もの忘れはあっても、お金・薬・買い物は、工夫すれば自分でできる MCI のページへ
- 軽度・手助け 少し
- 以前はできていたお金・薬・買い物などに、人の手助けが要るようになる。着替え・食事・トイレは、声かけがあれば自分でできる
- 中等度・手助け 中くらい
- ひとりでの外出が難しくなり、服選び・着替え・身だしなみに手助けが要る
- 高度(重度とも)・手助け 多く
- 言葉が減り、食事・トイレに多くの介助が要る
始めるための条件2
- 1PET か髄液(腰から取る液)の検査で、アミロイドβのたまりを確かめる
- 2MRI が撮れる
- 3ご本人とご家族が説明を聞き、納得している
症状がなく、アミロイドβがたまっているだけの方と、中等度より進んだ方は、この治療の対象外です。治療中に中等度へ進んだときは、点滴をやめて、改めて評価します2。
認知機能の点数の目安(医師が確かめます)
- MMSE(30点満点の認知機能の検査):レカネマブは22点以上、ドナネマブは20〜28点2
- CDR(認知症の重さの物差し):0.5 か 12
HOWどう効く?
脳にたまったアミロイドβに薬がくっつき、脳の掃除役の細胞に片付けてもらう薬です。アルツハイマー病では、アミロイドβがたまることで神経細胞が傷むと考えられています2。3つの段に分けて示します。
-
たまる
アミロイドβ(脳にたまる、ごみのようなたんぱく質)が、症状が出る何年も前から、神経細胞のまわりにかたまってたまります34。
-
神経が傷む
神経細胞が傷んで減り、脳がやせていきます。これが、もの忘れにつながります24。
-
点滴の薬で減らす
薬(抗体)がアミロイドβに目印のようにくっつき、脳の掃除役の細胞が片付けます。治す・止める薬ではなく、進みをゆるやかにする薬です1。
EFFECT効き目のイメージ
点滴をしても、下がり続けます。下がり方がゆるやかになります。
図はイメージです。線の傾きは、レカネマブの試験の平均(18点満点の点数の、18か月の悪化:偽薬 1.66/点滴 1.21。差は約0.45点)の比で描いています19。
レカネマブ
18か月で
27%
悪化がゆるやかに1
ドナネマブ
76週(約1年半)で
22%
悪化がゆるやかに1
数字の読み方
レカネマブ
レカネマブは、認知機能と日常生活の力をあわせた点数(CDR-SB)の悪化を、18か月で約27%ゆるやかにしました1。
ドナネマブ
ドナネマブは、別の物差し(iADRS)で測った、認知機能と生活の力をあわせた点数の悪化を、76週(約1年半)で約22%ゆるやかにしました(最初に承認されたときの使い方で調べた試験)。脳にたまるもう一つのたんぱく質=タウのたまりが軽〜中等度の方では、約35%でした1。
「27%・22%の人に効く」という意味ではなく、悪くなる速さの差です。物差しと試験が薬ごとに違うので、この2つの数字で薬の優劣は比べられません。進行を止めるのではなく進む時計をゆっくり回す治療です。
FLOW受けるまでの流れ当院との3段階
対象はアルツハイマー病による MCI5 〜軽度のアルツハイマー型で、アミロイドβの蓄積が確認できる方です12。早期発見は当院、アミロイドβの確認と治療の開始は認定施設という連携で受けていただきます。点滴を始めて 6 か月以降は、認定施設からの紹介で、当院で点滴を続けられます2。
-
当院で早期発見・スクリーニング
認知機能テスト・頭部 MRI・血液検査で対象になりそうかを評価し、脳のむくみ・小さな出血のリスクを説明したうえで、必要に応じて、条件を満たした専門の病院(認定施設)へ紹介します。受診のときは、お薬手帳をお持ちください。血をサラサラにする薬を飲んでいても、受けられないとは限りません1。
-
認定施設で確かめて、始める
紹介先でアミロイドβを確かめる専門検査(PET か髄液の検査)と MRIを受け、脳のむくみや小さな出血のリスクも画像で慎重に確かめたうえで、適応が確認できれば投与を開始します。治療中も MRI をくり返し受けます。次の方は受けられません12。
- PET(画像の検査)か髄液(腰から取る液)の検査で、アミロイドβがたまっていると確かめられない方
- MRI が撮れない方(体の中に、MRI に対応していない金属の医療機器〔ペースメーカーなど〕がある方)
- 始める前の MRI で、脳の小さな出血が5個以上ある・むくみがある・1cm を超える脳出血のあとがあるなど、出血しやすい変化が見つかった方
点滴を始める前に、脳のむくみ・小さな出血の起こりやすさに関わる体質(APOE という遺伝子の型)を調べることがあります。受けるかどうかは、ご家族と一緒に説明を聞き、納得したうえで、主治医と決めます17。
-
6 か月以降は当院で続ける
点滴を始めて 6 か月以上がたつと、認定施設からの紹介で、当院で点滴を続けられます。半年ごとの効果の確認と定期の MRI は認定施設で行い、そのあいだの点滴を当院で受けられるので、通院の負担を抑えられます2。
「対象になるかどうかをまず知りたい」という方も当院でご相談いただけます。
COMPARE2つの薬の違いレカネマブ・ドナネマブ
点滴の回数と、1回の時間が違います。
レカネマブとドナネマブの点滴の比べ
| 項目 | レカネマブ | ドナネマブ |
| 点滴の回数 | 2週間に1回 | 4週間に1回7 |
| 1回の時間 | 約1時間 | 少なくとも30分1 |
| 通う場所 | はじめの6か月は認定施設。その後は、紹介で当院でも点滴できます(半年ごとの確認と MRI は認定施設)2 |
| 続ける期間 | どちらも原則1年半(18か月)まで2 |
- ドナネマブは、終わってから少なくとも30分は様子を見ます1。
- ドナネマブは、1年ごろの PET 検査(脳のアミロイドβを写す検査)でアミロイドβが消えていれば、そこで終わります12。
- 途中でやめるか、1年半より長く続けるかは、主治医が半年ごとに効き目を確かめて決めます2。
費用のめやす(2026年10月時点)
薬代は、保険がきく前の額で、月およそ20万〜27万円です(体重や点滴の回数で変わります)110。窓口で払う額には、月と1年の上限があります11。
年齢と年収のめやすごとの、窓口で払う額の上限
| 年齢・年収のめやす | 月の上限 | 1年の上限 |
70歳以上 年収約370万円まで | 2.2万円 | 21.6万円 (外来) |
70歳未満 年収約370万円まで | 6.15万円 | 53万円 |
年齢を問わず 年収約370〜770万円 | 約8.6万円 | 53万円 |
たとえば(薬代で計算)
- 75歳・1〜2割月 約2万〜2.2万円(1年で21.6万円まで)
- 68歳・3割・年収約500万円月 約6万〜8.6万円(1年で53万円まで)
- 受診・検査代も、同じ上限に入ります。
- 月の上限は、マイナ保険証か、事前にもらう「限度額適用認定証」を使えば、窓口で止まります。1年(8月〜翌年7月)の上限を超えた分は、あとで払い戻されます11。
- 住民税が非課税の方は低く、年収約770万円を超える方は高くなります。上限は、2027年8月に見直される予定です11。
自分がどの区分かは、加入している保険の窓口で確かめられます。制度は、厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」に、くわしく載っています。
SAFETY治療中の検査と副作用
多い副作用は、脳のむくみ・小さな出血と、点滴に伴う反応です。むくみや出血は症状が出ないことが多く、MRI で見つかります1。そのため治療中は、症状がなくても、決まった時期に MRI を受けます。
治療の1年半を1枚で12
- MRI
- 1か月ごろの MRI(ドナネマブは必ず受ける回、レカネマブは「受けることが望ましい」とされる回)
- 点滴(レカネマブは2週間に1回、ドナネマブは4週間に1回=目盛りの1本おき)
- 脳のむくみ・小さな出血がとくに多い時期
- 6か月の所の「//」の印から先は、縮めて描いています
- MRI でむくみ・出血が見つかったときは、程度と症状に応じて、点滴を続けるか、休むか、やめるかを主治医が決めます1。
- 症状がなくても、始めてから半年の間に4回ほど(1・2・3・6か月ごろ)、その後も定期的に MRI を受けます16。
- ドナネマブのむくみ・出血は、重くないものも含めると24週(約6か月)までに多いとされています1。
副作用の起こりやすさ(点1つ=1人。100人あたり、おおよその人数)
- ドナネマブは、いまの使い方(少ない量から増やす)で調べた試験の数字です1。試験が薬ごとに違うので、この数字で2つの薬の副作用の多さは比べられません。
- 遺伝子の型で、APOE ε4 を2本持つ方では、むくみが多く、100人あたりレカネマブ約33人・ドナネマブ約24人でした(ドナネマブは少ない人数で調べた数字です)1。
CAUTION治療中に気をつけること
3つの場面とも、まず
この点滴を受けていると伝えてください
-
こんなとき
- 突然の激しい頭痛
- くり返し吐く
- 急な片側のまひ
- ろれつが回らない
- 言葉が出ない
- けいれん
- 呼んでも反応が鈍い
こうする
119に電話する
-
こんなとき
- いつもと違う頭痛
- めまい
- 吐き気
- 見えにくい
- ふらつく
- うまく歩けない
- ぼんやり
- 受け答えがちぐはぐ
こうする
- 治療の何か月目でも、すぐに点滴を受けている病院へ167
- 夜間・休日でつながらないときは、救急外来へ
-
こんなとき
血をサラサラにする薬(抗凝固薬・抗血小板薬)をいま飲んでいる
こうする
点滴を始める前に必ず医師に伝える7。自分の判断で飲むのをやめない
こんなとき
ほかの病院で薬をもらう
こうする
この治療を受けていると伝える7
なぜ?血をサラサラにする薬(抗凝固薬・抗血小板薬)や血栓を溶かす薬は、この点滴と一緒に使うと、脳の出血を起こしたり、ひどくしたりするおそれがあります1。飲んでいるだけで受けられないとは限りません。一緒に使うときに注意が要る薬なので、点滴を始めるかどうかは医師が判断します1。