アルツハイマー病の新しい治療(抗アミロイドβ抗体薬)レカネマブ・ドナネマブの対象・しくみ・副作用

アルツハイマー病の新しい治療のページ冒頭イラスト。「早く気づけば、選べる治療も」「専門病院と、つないで」の見出しと、まず相談・専門病院で確認・近くで続けるの3つの短い言葉。右側では、年配の母と付き添う娘が、町のクリニックから丘の上の専門病院へつづく散歩道を並んで歩いており、近くのクリニックと専門病院が連携して治療を進めることを表している。

WHO誰が対象?

対象は、アルツハイマー病の早い段階(MCI と軽度の認知症)の方だけです2。

この治療の対象アルツハイマー病による・アミロイドβのたまりを確かめた方

認知症の手前

  1. MCI(軽度認知障害)

    手助けなし

    もの忘れはあっても、お金・薬・買い物は、工夫すれば自分でできる

    MCI のページへ

認知症

  1. 軽度

    手助け少し

    以前はできていたお金・薬・買い物などに、人の手助けが要るようになる着替え・食事・トイレは、声かけがあれば自分でできる

  2. ここからは対象外
  3. 中等度

    手助け中くらい

    ひとりでの外出が難しくなり、服選び・着替え・身だしなみに手助けが要る

  4. 高度(重度とも)

    手助け多く

    言葉が減り、食事・トイレに多くの介助が要る

  1. MCI手助けなし
  2. 軽度手助け少し
  3. 中等度手助け中くらい
  4. 高度手助け多く
対象は、アルツハイマー病による・アミロイドβのたまりを確かめた方
それぞれの段階の目安
MCI(軽度認知障害)・手助け なし
もの忘れはあっても、お金・薬・買い物は、工夫すれば自分でできる MCI のページへ
軽度・手助け 少し
以前はできていたお金・薬・買い物などに、人の手助けが要るようになる。着替え・食事・トイレは、声かけがあれば自分でできる
中等度・手助け 中くらい
ひとりでの外出が難しくなり、服選び・着替え・身だしなみに手助けが要る
高度(重度とも)・手助け 多く
言葉が減り、食事・トイレに多くの介助が要る

始めるための条件2

  1. PET か髄液(腰から取る液)の検査で、アミロイドβのたまりを確かめる
  2. MRI が撮れる
  3. ご本人とご家族が説明を聞き、納得している

症状がなく、アミロイドβがたまっているだけの方と、中等度より進んだ方は、この治療の対象外です。治療中に中等度へ進んだときは、点滴をやめて、改めて評価します2。

認知機能の点数の目安(医師が確かめます)

HOWどう効く?

脳にたまったアミロイドβに薬がくっつき、脳の掃除役の細胞に片付けてもらう薬です。アルツハイマー病では、アミロイドβがたまることで神経細胞が傷むと考えられています2。3つの段に分けて示します。

  1. たまる 1つの神経細胞(青い、丸い体と枝)の体の縁と枝に、とげのある黒い小さなかたまり(アミロイドβ)が3つ付いている絵。 アミロイドβ(脳にたまる、ごみのようなたんぱく質)が、症状が出る何年も前から、神経細胞のまわりにかたまってたまります34。
  2. 神経が傷む 同じ神経細胞が灰色になり、枝が途中で途切れ、長い1本が点線になった絵(傷んだ神経細胞)。体の縁と枝に付いたかたまりは大きくなっている。 神経細胞が傷んで減り、脳がやせていきます。これが、もの忘れにつながります24。
  3. 点滴の薬で減らす 神経細胞に付いたかたまりは小さくなり、Y字の形の薬(抗体)がくっついている。黄色い掃除役の細胞が、薬のくっついたかたまりを2本の腕で抱え込んで片付けている絵。神経細胞は灰色の傷んだまま。 薬(抗体)がアミロイドβに目印のようにくっつき、脳の掃除役の細胞が片付けます。治す・止める薬ではなく、進みをゆるやかにする薬です1。

EFFECT効き目のイメージ

点滴をしても、下がり続けます。下がり方がゆるやかになります。

効き目のイメージ(線グラフ) 左端の同じ点から2本の線が右下へ下がる。灰色の破線が点滴なし(偽薬)、青い実線が点滴あり。青い線も下がり続けるが下がり方がゆるやかで、約1年半後に2本の間に差ができる。 認知機能と生活の力(上が良い) 点滴あり 点滴なし(偽薬) この差 治療を始めてから約1年半 →
図はイメージです。線の傾きは、レカネマブの試験の平均(18点満点の点数の、18か月の悪化:偽薬 1.66/点滴 1.21。差は約0.45点)の比で描いています19。

レカネマブ

18か月で

27%

悪化がゆるやかに1

ドナネマブ

76週(約1年半)で

22%

悪化がゆるやかに1

数字の読み方

レカネマブ

レカネマブは、認知機能と日常生活の力をあわせた点数(CDR-SB)の悪化を、18か月で約27%ゆるやかにしました1。

ドナネマブ

ドナネマブは、別の物差し(iADRS)で測った、認知機能と生活の力をあわせた点数の悪化を、76週(約1年半)で約22%ゆるやかにしました(最初に承認されたときの使い方で調べた試験)。脳にたまるもう一つのたんぱく質=タウのたまりが軽〜中等度の方では、約35%でした1。

「27%・22%の人に効く」という意味ではなく、悪くなる速さの差です。物差しと試験が薬ごとに違うので、この2つの数字で薬の優劣は比べられません。進行を止めるのではなく進む時計をゆっくり回す治療です。

FLOW受けるまでの流れ当院との3段階

対象はアルツハイマー病による MCI5 〜軽度のアルツハイマー型で、アミロイドβの蓄積が確認できる方です12。早期発見は当院、アミロイドβの確認と治療の開始は認定施設という連携で受けていただきます。点滴を始めて 6 か月以降は、認定施設からの紹介で、当院で点滴を続けられます2。

  1. 当院で早期発見・スクリーニング 認知機能テスト・頭部 MRI・血液検査で対象になりそうかを評価し、脳のむくみ・小さな出血のリスクを説明したうえで、必要に応じて、条件を満たした専門の病院(認定施設)へ紹介します。受診のときは、お薬手帳をお持ちください。血をサラサラにする薬を飲んでいても、受けられないとは限りません1。
  2. 認定施設で確かめて、始める 紹介先でアミロイドβを確かめる専門検査(PET か髄液の検査)と MRIを受け、脳のむくみや小さな出血のリスクも画像で慎重に確かめたうえで、適応が確認できれば投与を開始します。治療中も MRI をくり返し受けます。次の方は受けられません12。
    • PET(画像の検査)か髄液(腰から取る液)の検査で、アミロイドβがたまっていると確かめられない方
    • MRI が撮れない方(体の中に、MRI に対応していない金属の医療機器〔ペースメーカーなど〕がある方)
    • 始める前の MRI で、脳の小さな出血が5個以上ある・むくみがある・1cm を超える脳出血のあとがあるなど、出血しやすい変化が見つかった方
    点滴を始める前に、脳のむくみ・小さな出血の起こりやすさに関わる体質(APOE という遺伝子の型)を調べることがあります。受けるかどうかは、ご家族と一緒に説明を聞き、納得したうえで、主治医と決めます17。
  3. 6 か月以降は当院で続ける 点滴を始めて 6 か月以上がたつと、認定施設からの紹介で、当院で点滴を続けられます。半年ごとの効果の確認と定期の MRI は認定施設で行い、そのあいだの点滴を当院で受けられるので、通院の負担を抑えられます2。

「対象になるかどうかをまず知りたい」という方も当院でご相談いただけます。

COMPARE2つの薬の違いレカネマブ・ドナネマブ

点滴の回数と、1回の時間が違います。

レカネマブとドナネマブの点滴の比べ
項目レカネマブドナネマブ
点滴の回数2週間に1回4週間に1回7
1回の時間約1時間少なくとも30分1
通う場所はじめの6か月は認定施設。その後は、紹介で当院でも点滴できます(半年ごとの確認と MRI は認定施設)2
続ける期間どちらも原則1年半(18か月)まで2

費用のめやす(2026年10月時点)

薬代は、保険がきく前の額で、月およそ20万〜27万円です(体重や点滴の回数で変わります)110。窓口で払う額には、月と1年の上限があります11。

年齢と年収のめやすごとの、窓口で払う額の上限
年齢・年収のめやす月の上限1年の上限
70歳以上
年収約370万円まで
2.2万円21.6万円
(外来)
70歳未満
年収約370万円まで
6.15万円53万円
年齢を問わず
年収約370〜770万円
約8.6万円53万円

たとえば(薬代で計算)

SAFETY治療中の検査と副作用

多い副作用は、脳のむくみ・小さな出血と、点滴に伴う反応です。むくみや出血は症状が出ないことが多く、MRI で見つかります1。そのため治療中は、症状がなくても、決まった時期に MRI を受けます。

治療の1年半を1枚で12

脳のむくみ・小さな出血が とくに多い時期 最初の約3か月 レカネマブは 14週まで ドナネマブは 重いものが12週まで 点滴 点滴は同じ間隔で続く MRI その後も定期的に 始める前点滴開始1か月2か月3か月6か月1年1年半 ドナネマブはPET でアミロイドβが消えていれば終わる 6か月以降は、認定施設からの紹介で当院で続けられる 原則ここまで途中でやめるか延ばすかは、主治医が半年ごとに決める 脳のむくみ・小さな出血が とくに多い時期 最初の約3か月 レカネマブは 14週まで ドナネマブは 重いものが12週まで (点滴は同じ間隔で続く) 点滴 MRI 始める前点滴開始1か月2か月3か月6か月1年1年半 その後も定期的に 6か月以降は、認定施設からの 紹介で当院で続けられる ドナネマブは、PET で アミロイドβが消えていれば終わる 原則ここまで 途中でやめるか延ばすかは、 主治医が半年ごとに決める
  • MRI でむくみ・出血が見つかったときは、程度と症状に応じて、点滴を続けるか、休むか、やめるかを主治医が決めます1。
  • 症状がなくても、始めてから半年の間に4回ほど(1・2・3・6か月ごろ)、その後も定期的に MRI を受けます16。
  • ドナネマブのむくみ・出血は、重くないものも含めると24週(約6か月)までに多いとされています1。

副作用の起こりやすさ(点1つ=1人。100人あたり、おおよその人数)

脳のむくみ(ARIA-E)

症状が出る症状は出ない

レカネマブ13人

うち症状が出る 3人

ドナネマブ16人

うち症状が出る 3人

小さな出血など(ARIA-H)

レカネマブ17人

ドナネマブ26人

点滴に伴う反応(頭痛・寒け・発熱など)

レカネマブ26人

ドナネマブ18人

CAUTION治療中に気をつけること

3つの場面とも、まず

この点滴を受けていると伝えてください

  1. 緊急

    すぐに119番

    こんなとき

    • 突然の激しい頭痛
    • くり返し吐く
    • 急な片側のまひ
    • ろれつが回らない
    • 言葉が出ない
    • けいれん
    • 呼んでも反応が鈍い

    こうする

    119に電話する

    受診の急ぎ方の目安178

  2. 注意

    すぐに連絡

    こんなとき

    • いつもと違う頭痛
    • めまい
    • 吐き気
    • 見えにくい
    • ふらつく
    • うまく歩けない
    • ぼんやり
    • 受け答えがちぐはぐ

    こうする

    1. 治療の何か月目でも、すぐに点滴を受けている病院へ167
    2. 夜間・休日でつながらないときは、救急外来へ
  3. 相談

    薬をもらうとき

    こんなとき

    血をサラサラにする薬(抗凝固薬・抗血小板薬)をいま飲んでいる

    こうする

    点滴を始める前に必ず医師に伝える7。自分の判断で飲むのをやめない

    こんなとき

    ほかの病院で薬をもらう

    こうする

    この治療を受けていると伝える7

    なぜ?血をサラサラにする薬(抗凝固薬・抗血小板薬)や血栓を溶かす薬は、この点滴と一緒に使うと、脳の出血を起こしたり、ひどくしたりするおそれがあります1。飲んでいるだけで受けられないとは限りません。一緒に使うときに注意が要る薬なので、点滴を始めるかどうかは医師が判断します1。

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つつみ脳神経外科クリニック
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