30秒でわかるこの記事
今回わかったこと
コレステロールを下げる薬で、心筋梗塞などの発作が3割少なくなりました。「元気なまま過ごせる年数」が延びるとは示されませんでした。
あなたに関係すること
心筋梗塞・脳卒中などを起こしたことがなく、糖尿病や認知症もない、70歳
次にすること
根拠New England Journal of Medicine 2026/STAREE 試験——70歳
この印がついた4か所を先に読むと、3分ほどで要点がつかめます。折りたたみは開かなくて構いません。
この試験に参加したのは、70歳
次の病気を、言われたことは?
一つでもあれば、この記事の
どれもなければ、この記事の話です。
どんな試験だった?(4段)
元気な70歳以上 9,971人
オーストラリア。心臓や脳の病気、糖尿病、認知症のない方
薬 4,984人 / 偽薬 4,987人
薬はアトルバスタチン40mg。どちらを飲んでいるかは、本人も医師も知らされていません
約6年(中央値5.9年)
半分の方は6年より短く、半分の方はそれより長く見ています
発作は減る? / 元気なまま長く過ごせる?
この2つを、始める前に決めていました
医療者の方へ——参加者の顔ぶれ
心筋梗塞などの発作
亡くなる・認知症・体の障害のどれか
発作=心筋梗塞、脳卒中、心臓や血管の病気で亡くなること、心臓の血管の治療。棒のものさしは、どちらも 0〜150人。
1000人・約6年で
心筋梗塞
1000人・約6年で
脳卒中
心臓の血管を広げる治療(カテーテルなど)が必要になった方も減りました(1000人中 38人→22人)。棒の長さは 0〜30人のものさしです。
医療者の方へ——この記事の数字についている幅
発作のどれか=偽薬 8.3%・薬 6.0%。本文の 83人・60人は、これを 1000人に直した目安です。
| 項目 | 薬/偽薬 の人数 | ハザード比 (95%信頼区間) |
|---|---|---|
| 発作のどれか(主要1) | 297/412 | 0.70(0.61–0.82) |
| 死亡・認知症・障害(主要2) | 637/676 | 0.94(0.84–1.05) |
| 心筋梗塞 | 79/137 | 0.57(0.43–0.75) |
| 脳卒中 | 122/138 | 0.87(0.68–1.11) |
| 心臓の血管の治療 | 110/190 | 0.57(0.45–0.72) |
| 心臓や血管の病気で死亡 | 74/74 | 1.00(0.72–1.37) |
| すべての死亡 | 395/433 | 0.91(0.79–1.04) |
| 認知症 | 290/280 | 1.03(0.87–1.21) |
| 持続する身体障害 | 60/80 | 0.74(0.53–1.04) |
| どの理由であれ入院 | 2744/2771 | 0.99(0.94–1.04) |
主要1は P<0.001、主要2は P=0.25。主要2つ以外は多重性未調整(原著 Table 2 脚注)。NNT 37 は中央値5.9年時点の値。「ハザード比」は起こりやすさの比で、1より小さいほど薬の側で起きにくかったことを表します。
コレステロールと、飲み続けた割合
| 項目 | 薬を飲んだ方 | 偽薬の方 |
|---|---|---|
| 悪玉(LDL)の下がり幅率で約38%と13% | 48mg/dL | 16mg/dL |
| 5年後も飲み続けていた | 56% | 47% |
| 別のスタチンを処方された主治医から・推定値 | — | 19% |
悪玉(LDL)コレステロールの群間差は 31mg/dL(95%信頼区間 30–33)。偽薬の方の一部が別のスタチンを飲んでいたぶん、2つの群の差は縮む方向に働き、効果は控えめに出ている可能性があります。
75歳以上・女性ではどうか
75歳以上ではハザード比0.73(0.59–0.89)、70〜74歳では0.67(0.53–0.83)で、減り方は同じくらいでした。女性は0.85(0.67–1.08)、男性は0.62(0.51–0.75)です。交互作用の検定は報告されておらず、「女性には効かない」とも「男性によく効く」とも言えません。85歳以上だけの結果は出ていません1。
矛盾しているように見えますが、「薬が効く範囲」を絵にすると筋が通ります。
研究で分かったこと
心臓や血管の病気で亡くなった方は、1000人中 15人と15人で同じです。亡くなった方の8割は、心臓や血管以外の理由でした1。
考えられる理由推定
亡くなる理由の大半には薬が効かないため、「亡くなる・認知症・障害」の合計では薬の効果が薄まった、と考えられます1。
| 起きたこと1000人あたり | 偽薬の方 | 薬を飲んだ方 |
|---|---|---|
| 減った(比べる物差し) | ||
| 発作のどれか心筋梗塞・脳卒中など | 83人 | 60人減った |
| 注意(薬の方で多かった) | ||
| 筋肉・関節の不調重いものはどちらもまれ(2人と2人) | 294人 | 320人少し多い |
| 肝臓・胆道の不調重いものはどちらもまれ(1人と2人) | 9人 | 33人多い |
| 糖尿病にかかわる出来事重いものはどちらもまれ・中身は原著に記載なし | 27人 | 40人少し多い |
| 副作用で薬をやめた | 61人 | 72人少し多い |
重い副作用は 27人と27人で増えませんでした。軽い不調(筋肉・肝臓・血糖)は薬の方でやや多く出ています。
はっきりしない/同じ だった3つ(1000人あたり)
| 起きたこと1000人あたり | 偽薬の方 | 薬を飲んだ方 |
|---|---|---|
| 亡くなった(すべての原因) | 87人 | 79人はっきりせず |
| 認知症 | 56人 | 58人同じくらい |
| 重い副作用 | 27人 | 27人同じ |
「はっきりしない」は、減らないと分かったのではなく、この試験では差を確かめられなかったという意味です。結果は参加者全員、副作用は1回以上飲んだ方が分母です(約2%の差)。副作用は試験の医師が薬と関係ありうると判断したものです1。
医療者の方へ——副作用の割合と出どころ
| どんな出来事か | 薬を 飲んだ方 | 偽薬の方 |
|---|---|---|
| 筋肉や関節の不調 | 32%重い 0.2% | 29%重い 0.2% |
| 肝臓・胆道の不調 | 3.3%重い 0.2% | 0.9%重い 0.1% |
| 糖尿病にかかわる出来事 | 4.0%重い 0.1%未満 | 2.7%重い 0.1%未満 |
| 神経の不調 | 24%重い 0.2% | 24%重い 0.1% |
分母は1回以上飲んだ4876人と4847人(修正ITT)。試験の医師が関連ありと判断した事象のみで、統計検定・信頼区間はありません(「有意に増えた」とは書けません)。重篤有害事象は2.7%と2.7%、医学的に重要な有害事象は8.8%と6.7%、有害事象による中止は7.2%と6.1%。始める時点で筋肉の症状があった方が46%いました。ミオパチー・横紋筋融解症・肝不全の個別件数は原著に記載がありません1。
ここまでの結果にご自身の考え方をのせれば、飲むか飲まないかは、主治医と一緒に決められる問いになります。
医療者の方へ——この試験の限界(著者の記載)
5つの病気に当てはまらないか、確かめる
「これは、あなたの話ですか?」の5つの病気がないかを確かめ、健診の紙で自分の悪玉(LDL)コレステロールの数字を見ておきます。試験の参加者は平均
健診の結果とお薬手帳を、次の受診に持っていく
健診の結果・お薬手帳・気になる症状のメモをそろえて、次の受診で主治医に「この薬を続けるか(始めるか)」を相談します。
いま飲んでいる方は、自分の判断でやめない
気になる症状が出たら、やめる前に当院か主治医に連絡します。
1つでも当てはまれば、ご相談ください。
薬とは別に、血圧を測る・歩く・たばこをやめることも広くすすめられています。アスピリンの記事と脂質異常症のページでご紹介しています。
コレステロールをはじめとする生活習慣病のご相談は、当院で承っています。
これらは薬を出すための検査ではなく、ご自身の血管の状態を知り、必要な対策を選ぶための検査です。
ご家族の同席も歓迎します。ご予約なしでも受診いただけます。
この試験の4割を超える方が75歳より上で、85歳以上の方も408人参加しています。発作の減り方は70〜74歳の方と75歳以上の方で同じくらいでした。年齢だけを理由に、効かないと考える必要はありません。ただし、85歳以上だけを取り出した結果は出ていません1。
この試験では、認知症になった方は薬を飲んだ方290人・偽薬の方280人で、減りも増えもしませんでした。認知症を防ぐ目当てでこの薬を飲む理由は、いまのところありません。「コレステロールが高いと認知症になりやすいか」は、この試験が調べたことではありません。
飲まない選択も間違いではありません。決めたことを主治医に伝え、健診は続けて、コレステロール・血糖・血圧の数字の変化を一緒に見ていきましょう。血圧を測る・歩く・たばこをやめることは、薬とは別に広くすすめられています。体の状態が変わったとき(心臓や脳の病気、糖尿病と言われたとき)は、この記事の話ではなくなるので、あらためてご相談ください。
血圧やもの忘れについても、研究をご紹介しています。
| 曜日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日・祝 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 午前 | 9:00 – 12:30 | 休診 | |||||
| 午後 | 14:00 – 18:00 | 14:00 – 17:00 | 14:00 – 18:00 | 14:00 – 17:00 | |||
※ 受付は午前・午後ともに診療終了の30 分前までです。日曜・祝日・お盆・年末年始は休診です。
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